「『ぴあ』の時代」  思いがけない反響

掛尾良夫


 「『ぴあ』の時代」は1950年生れの矢内廣(ぴあ代表取締役社長)が、中央大学に入学して映画研究会に所属し、大学4年の1972年に『ぴあ』を創刊し、1980年代に50万部を超える情報誌に成長させるまで――創業からの20年、昭和の最後の20年を追ったものだ。

 私も矢内と同じ年に生まれ、映画雑誌『キネマ旬報』の編集者として、『ぴあ』創刊後間もないころに矢内と出会った。『ぴあ』には同世代の仲間たちが集まり、取次から相手にされなかった当初は、スタッフがリュックに雑誌を詰めて書店に直販に回った。やがて『ぴあ』は軌道に乗り、「ぴあフィルムフェスティバル」を立ち上げ、チケットぴあを創業することになる。
 
 また、矢内は事業の節目で、紀伊国屋書店社長だった田辺茂一氏、教文館社長だった中村義治氏、日本電信電話公社総裁だった真藤恒氏といった人たちとの出会いによって大きく成長した。そんな、仲間や業界の諸先輩たちを惹きつける矢内の人間像を生い立ちから追ったのが本書である。
 
 本書は、私と交流の深かった仲間たちの姿を通じて、『ぴあ』成長の背景となった時代を描いたものであり、執筆のもともとの狙いは私たちの世代の郷愁でもあった。しかし、若い世代の読者の方々から、“青春小説”、フェイスブックに通じる“ビジネス書”として感動と刺激、勇気を受けたという便りを多数受け取り、驚いている。本書によって、若い世代の読者の方々に勇気を与えることができたならば、望外の喜びである。


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