1999年に『出版社と書店はいかにして消えていくか』(ぱる出版、増補版論創社2008年)を上梓して以来、『ブックオフと出版業界』『出版業界の危機と社会構造』『出版状況クロニクル』『『出版状況クロニクルU』(いずれも論創社)と、思いもかけずに出版業界に関する状況論を続けて出してきた。今回の『出版状況クロニクルV』を加えると、6冊になる。
この十数年間の出版業界の歴史が何であったかはいうまでもないだろうが、まさに失われた十数年であって、かつてない深刻な出版危機へとスパイラル的に歩んできた。それらをめぐる出版社、取次、書店の失墜状況は、最新の出来事を収録した今回の『出版状況クロニクルV』を例として参照頂ければ、ただちに了解されると思う。
それらの詳細は読んでもらうしかないが、ここでひとつだけ記しておけば、出版物販売金額のピークは1996年の2兆6564億円、2011年は1兆8042億円と、この15年間で8522億円、つまり96年の3分の1近い売上高が失われてしまったことになる。
しかもこれは日本だけで起きている特異な出版危機であって、欧米の出版業界はこの間もずっと成長してきたのである。異常な事態とよんでもいいし、このような出版業界の凋落が古書業界に影響を及ぼしていないはずもないし、新刊、古本ともに含んだ日本の書物文化の危機の表れなのだ。
どうしてこのような危機的状況に陥ってしまったのかを追跡してきたのが6冊の拙著であり、それは1997年から2011年にかけての出版史の記録となっているはずである。そしてこの危機の追跡は現在でも継続し、毎月「出版状況クロニクル」として、私のブログ《出版・読書メモランダム》で発信している。
『出版状況クロニクルV』はその最新の集成である。危機はさらに続いているし、まだしばらくは発信を止めることはできない状況に、私も置かれている。
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