『探偵作家発見100』には、100名の探偵作家が登場する。彼らは戦前に生まれ、戦中、戦後に娯楽雑誌やカストリ雑誌に執筆、時には、少部数の単行本を刊行している。それらの収集を通じて、探偵小説研究に力を注いだ江戸川乱歩、鮎川哲也、中島河太郎らがなしえなかった、探偵作家の略年譜や来歴、探偵作家の発表作品や探偵小説の発掘を試みた。
30数年にわたる私の収集は紆余曲折を経てなされたものである。学生時代をすごした東京、なかでも神田の古書店や大岡山のA書店から、読物としてのカストリ雑誌や探偵小説を集めはじめた。しばらくして、会員制(会員数800名)の定期刊行「古書目録」(20頁、100名参加、一人30点登録、年4回発行)には、探偵雑誌(新青年、宝石、黒猫など)やカストリ雑誌が出品されているので、会員に「葉書」を出し、連絡を待って、振込み後に入手する、というような、のんびりした時代のなかで、探偵物のマニアの存在を知ることになった。やがて、親しくなった10名のマニアから直接連絡があって、私にだけ送られてくる出品リストから戦後刊行仙花紙の探偵小説(小栗虫太郎、海野十三、木々高太郎など)を見境なく購入し、また、雑誌「宝石」や様々な種類の雑誌を手当たり次第に手に入れた。
同時期、私の手元には、史録書房、龍生書林、八勝堂書店、芳林文庫、西村文生堂、落穂舎などから探偵物に特化した「古書目録」、また各地の古書店の出した「古書展目録」が年間800点も送られてきていたので、止めどなく購入することになった。今では、定期的に探索ノートを見ながら、ホームページ「日本の古本屋」をチェックしている。勿論、発行されたカストリ雑誌、すべてを完全収集することを目指しているからである。
本書は、そのようにして購入した探偵小説や雑誌に目を通して長い期間にわたってまとめた「探偵作家ノート」50冊をもとに執筆した。探偵物に興味がある若い世代の方々には、探偵作家ごとに、あるいは雑誌ごとに項目をわけて、自分用のデータを蓄積することを薦めたい。そこには、素晴らしい発見があるからで、おそらく君を捉えてはなさないだろう。
『探偵作家発見100』 若狭邦男 著
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