今年の6月初めに、思い立ってメールマガジン「早稲田古本村通信」を復刊した。調べてみるとこのメルマガが初めて配信されたのは2003年。
今年はちょうど10年目にあたることに後から気づいた。かつては早稲田古書店街の広報部が発行する公的なメルマガだと宣伝していたのだが、実際には自分が勝手にやっていたものであり、自由に編集をしていた。
古本だけでなく早稲田という街の情報を集めた「情報号」と、知人に書きたいを書いてもらう「コラム号」の月2回配信。コラム号からは、倉敷の古本屋、蟲文庫店主の田中美穂さんの連載が書き下ろしを加えて『わたしの小さな古本屋』(洋泉社)として単行本化、『私は猫ストーカー』で知られる浅生ハルミンさんの愉快な人生相談も『猫座の女の生活と意見』(晶文社)に収録された。
書き手に恵まれて配信していたものの、連載が変わっていく中で、どこか疲れてしまったというか、新たな依頼をしないのでコラムは減っていき、次第にメルマガはイベント前日に「明日からです」ということを伝える増刊号だけになり、2010年の秋ごろに自然消滅した。そのころにはすでに新たなメディアであるツイッターが人気を伸ばしてきていて、そこでの広報が主流になっていき、もはやメルマガに戻ってくることはないと思っていた。そんな気楽さからか、ブログで書いていた「古書現世店番日記」も更新しなくなり、なんとなく短い文章をツイッターで流し続けることで満足していた。
今年に入り、千駄木にある新刊書店、往来堂書店さんが地道に配布しつづけてきた手書きのフリーペーパー「往来っ子新聞」を合本したものを販売した。おすすめの書籍などが毎号とても自由な感じでまとめられていて、なんだかとても「編集欲」が刺激された。紙という枠におさまっている情報はただ流れていくだけのとは違う「意識」が感じられた。自分も意識ある媒体を作りたくなった。
自分は、早稲田・目白・雑司が谷の三地域で本に関する仕事をしている人間のグループ「わめぞ」という団体で、古本のイベントなどを手掛けているが、ただイベントをやるだけでなく、どういう思いで、どんな毎日の中でやっているのかを、ブログもやめてしまっている現在、伝えるメディアを何も持っていなかった。そこで思い出したのが冬眠していたこのメルマガの存在で、ここからもう一度個人として、「自分の思い」を人に伝える作業をはじめようと思い6月に復刊したというわけだ。
メルマガは週刊。その週に思ったことを書く巻頭言、ブログでやっていた店番日記、本に限らず面白いと思った情報にリンクを張るトピックス、自分の関係する古本市の情報でなる。あまり気張らず、等身大の自分の「物語」をお伝えできればと思っている。
「早稲田古本村通信を復刊して」 古書現世 向井透史
http://d.hatena.ne.jp/sedoro/20130614
|