トマソン社『BOOK5』

編集長 松田友泉


 一般書店であまり流通していない冊子(ミニコミ・リトルプレス)などをネット販売する「トマソン社」を立ちあげたのが2012年の1月。その数カ月後の5月5日に“本に関わるすべての人へ発信する情報バラエティ誌”と銘打ち、隔月刊行誌『BOOK5』を創刊した。

 最新号である9号は、「古書目録」を特集した。目録を刷っている印刷屋さんや、古書目録制作実務、支払いのために奮闘するコレクター、“古書目録そのもの”の面白さ、即売展と古書目録……と、今までにない内容となっているのではないかと思う。今号はご好意で、「地下の古書市」で行われたトークショー「薔薇十字外伝」も収録させていただいた。

 古本に関する特集は2回目にあたる。1回目は第3号の「しばったり、つつんだり」という特集で、古本屋さんの「本縛り私史」や「縛りの実際」などとともに、マイカロン、スズランなどのビニール紐の違いや、オープン、スパットUなどの紐切りの種類などを取材した。古本屋さんには、非常に好評を持って迎えられた。

 他にも、出版者、本の流通、医学書、30代女性、名画座、日記などの特集を組んだ。こうやって書いていて気がついたのだが、頑なに本そのものをほぼ取り上げていない。あえて周辺、ではなく、周辺ド真ん中だ。名画座に至っては、本ですらない。そのせいか、売れゆきはいいとは言えない。

 私自身は、地方の印刷屋に勤務後上京し、古本屋、図書館、新刊書店とアルバイトをしてきた。それぞれの本業界には、面白いことが沢山ある。今回の古書目録特集にしても、そもそも「古書目録」じたいを知らない人もいるわけだし、また東京古書会館と神田古書センターを混同している人も当り前のようにいる(これはよく言われる)。私自身も、古書会館の即売展はそれぞれメンバーが違っていて、特色があることを知ったのは、東京に来てからのことだった。

 それぞれの業界、つまり本の周辺の妙味をわかりやすく、また敷居を低くさせながら個々の溝を埋め、そして「バラエティ雑誌」の名の通りなるべく面白い(笑って楽しめる)誌面をつくろうとしているが、なかなかうまくいかない。ここ最近になって知ったのだが、大体の人は自分の根っこにある経験(編集者・ライター・新刊・古本・取次等)をベースに考えたり好奇心を持ったり、あるいは判断したりするもので、私のように節操のない関心を持ってベースのない人間はごく僅かなのだ。売れないはずである。

 もともと編集者の経験がないので、作業は手探りだ。活字系の雑誌も、自分で作るまでは熱心に読んだ経験が浅い。そのため、もっぱら参考にするのはテレビ番組で、創刊当初は『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の構成や企画を参考にしていた。  次号でついに10号になる。特集は「本と腰痛」。この特集タイトルを言うと笑われることが多いが、しかしこれほどまでに腰を痛める業界もないのではないか。百万塔陀羅尼や古活字本が生まれるはるか以前から、脈々と続く「腰痛」と、「本」との出逢い……どうしても、儲からない方へと行っている気がするが、それでも出し続けることで、何かが変わるのではないかと思っている。

(買える場所) ジュンク堂書店吉祥寺店・池袋店・福岡店他 まんだらけ中野店記憶・大予言 古書往来座 タコシェ 模索舎 ガケ書房 古書善行堂 古本徒然舎他
通販はトマソン社で! http://tomasonsha.com/



『BOOK5』9号 特集:古書目録 トマソン社刊
    定価:800円(税込) 好評発売中

http://tomasonsha.com/?mode=cate&cbid=1262007&csid=1&sort=n

   


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