『古書手帳』の出版

駱駝舎・川村光郎


 『古書手帳』はなぜこんなに売れるのだろう。編集作業をほぼ終えた9月10日に東京古書組合員にファックスで「発刊のお知らせと予約のご案内」を送った。そうしたら、なんと1週間も経たないのに、予約注文は500部を超えてしまったのである。当初は800部印刷の予定だった。東京の古本屋さんだけではなく、全国の古本屋さんにも渡したいねということで部数を1000部に増やしたばかりだった。発行予定日が10月15日だからそれまでに予約数がどれだけ増えるのか予想が付かない。

発行前に売り切れてしまうこともあり得るのではないかと嬉しいような不安がある。結局、印刷所に1500部の注文をした。ところが、9月23日中央線支部ホームページに案内を載せ、広報部長の三暁堂・梶塚氏がツイートしたところ、1時間に100件を超えるリツイートがあったという。そして一般の人たちからの注文メールが全国から集まってきた。10月初めに予約だけで1000部を超えてしまった。

 わたしが約40年やってきた外国書の輸入販売から手を引いて、まだ肉体は頑健だから古本でも扱ってみようかと東京古書組合に加入したのは7、8年前のことだ。水道橋の日大の近くにあった事務所兼店舗も閉じて、中野の自宅で古本屋といっても仕事にならない。倉庫を持つこともなく、古書を山で買うこともできない。同じ本を扱うにしても不慣れな仕事に戸惑うばかりだ。市場で耳に入る言葉も意味がよく分からない。仕事もままならぬまま、昨年夏から中央線支部の(部下のいない)機関紙部長となり月刊で『支部ニュース』をつくりはじめた。 A4判2段組の2ページ。どうということもない内容だが、自分の意見を折り込みながら支部長黙認のまま勝手に編集している。

そもそも『手帳』の発端は日本の古書についてもっとよく知りたいと思ったことだ。自分のためのメモ書きのようなものだったのである。それが機関紙部長など引き受けたものだから、支部の組合員のために一肌脱ぐかとなり、役員会で内容の一部を見せたりしている内に東京の組合員にも宣伝しようとなり、もっと広げて全国の組合にも案内を出そうとなり、最後は一般の人たちにも売りましょうということになった。

考えてみれば、これほどの反響を得たのは、出版の原点に戻ったからではないだろうか。それは自分が求めている情報を集めてそれを多くの人と共有しようと始まった企画だからである。そして支部組合員用には定款・規約類、住所録を付加した特別版を別に200部つくるようにした。いろいろ事情があり、中央線支部員用の『組合員手帳』と市販用の『古書手帳』の2種類をつくることになったのである。原稿・イラスト・レイアウト・入力・編集・校正・装丁をほとんど1人でこなしたので、楽しい作業ではあったが、酷暑の後は疲労困憊の状態になった。

 内容的には、我ながら面白い本に仕上がったなと思う。これまでこのようにまとめた小冊子がなかったことが不思議だ。文庫本サイズだから携帯しやすいし、「和本の作法」、「古本屋の流儀」、「洋古書目録を読む悦楽」の章それぞれに図解をつけ、用語集は読み物としても面白い。「西暦・和暦比較対照表」、東京で開催されている約50の即売展情報は役に立つ。古本屋ツアー・イン・ジャパンの小山力也氏のエッセイまで入っている。これで定価はわずか500円なのだから売れないはずはない。再版はしないので、今年中(あるいは10月末)には絶版書となり、古書店での価格は倍に跳ね上がるかもしれない。

10月26-27日には高円寺フェスの西部古書会館で、10月26日から11月4日まで行われる神田古本まつりの案内所でも手帳の販売をします。その分の300部は確保してある。売り切れないうちにお出かけ下さい


色は2種類ありますが、中は一緒です。



東京古書組合 中央線支部
    定価:500円+送料 好評発売中

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