5月末に出した別冊本の雑誌『本屋の雑誌』は雑誌という書名からイメージされる厚さをはるかに凌駕するボリュームと緑色のシンプルなカバーがウリ。あまりの厚さに書店の店頭でそれと気づかずスルーしてしまう人がいるとか、当社らしからぬおしゃれな(と自分たちでは思っている)装丁が輪をかけて見逃しに力を貸しているという噂も耳にするが、なにを隠そう書店カバーを模しているのである。そして本文はなんとなんとの400ページ! おまけに京都の三月書房と千駄木の往来堂書店の棚が読めるカラーグラビアが8ページつくという圧倒的な分量なのである。
どうしてこんなに厚くなったのか。実は『本屋の雑誌』は『SF本の雑誌』(09年)、『古本の雑誌』(12年)に続くダジャレ書名別冊シリーズ(?)の第3弾で、前2作と同様、本の雑誌に掲載した新刊書店関係記事の再録と新原稿の2本立てで構成している。ようするに新旧ごったまぜのバトルロイヤル本なのだが、前2作が過去の記事4割、新原稿6割の割合なのに対し、第三弾は過去記事が全体の7割強を占めることになってしまったのである。
なんだい、再録ばっかりかい、と思う人もいるかもしれないが、ちょっと待っていただきたい。『SF本の雑誌』は176ページ、『古本の雑誌』は192ページ。対して『本屋の雑誌』は408ページで、新原稿だけで108ページ分あるのである。『SF』『古本』と比べて新原稿の分量は決して見劣りしない、ということはおわかりいただけるだろう。
それでもバカみたいな厚さになってしまったのは、過去の記事があまりにも面白く、割愛するにしのびなかったからである。たとえば書店に行くと便意を催すという「青木まりこ現象」の謎と真実を1985年と2013年の2度にわたって探ってみたり、立ち読みの研究をしてみたり、ジュンク堂書店に単独登攀してみたり、本屋プロレスをレポートしてみたり、いや、どうしてこんなに面白いことを思いつくんだと自画自賛したくなるものばかり。困ってしまうのだ。
かくして再録記事だけで300ページにのぼったわけだが、これでも泣く泣く落とした記事は山のようにある。それほどに本の雑誌は新刊書店関連の記事を掲載し続けてきたという証でもあり、この再録記事の数々は本の雑誌創刊からの39年間に書店がどう変わったのか、あるいはどこが変わらなかったのを知るよすがになると自負している。108ページの新原稿がすぐれものであることは言うまでもないが、今回の別冊に関しては39年間の書店状況を俯瞰できる再録部分にこそ『本屋の雑誌』と名乗れるキモがあるとあえて言っておきたい。古本屋さんもいいけど、新刊書店もいいですよ。『本屋の雑誌』を読んで、新刊書店にますます足を運んでいただけるとうれしい。
『本屋の雑誌』(別冊本の雑誌17)
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http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860112561.html
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