世田谷文学館「日本SF展・SFの国」
2014年7月19日(土)〜9月28日(日)

世田谷文学館 中垣理子

かつて、日本に「SF」を根付かせようと集った若き作家たちがいました。 星新一、小松左京、手恷。虫、真鍋博、筒井康隆ら、第一世代と呼ばれる作家たちは、当時の日本でまだ認知度が低かったSFを、どう表現し、読者に届けるか奮闘します。彼らの作品は、子ども・若者たちを中心に熱狂的に受け入れられ、その後、今や世界を席巻する日本アニメ―ションや特撮映像作品とともに大きな発展を遂げます。また、当時「日本SF」に親しんで育った読者たちが、現在は文化芸術、科学技術の分野ほか、多方面で活躍しています。 作家たちは、未来を語るために「想像力」を磨き、それぞれの表現を追求しました。彼らの作品は、俯瞰的にものを見る大人の知力に支えられ、ひとりの人間としてあらゆる事象に立ち向かうためのヒントに溢れています。

『日本沈没』『復活の日』などで知られる小松左京は、次のように言います。

生命科学の急速な発展やネット社会の進化をあげるまでもなく、これからも科学技術は加速度的に変化してゆく。そうした中で、「科学」と「文学」をつなぐSFの重要性は高まりこそすれ、決してなくなることはない。そして今後は、ことさらSFと言わずとも、ごく当たり前にSF魂を備えた若い人たちが続々と登場してくることだろう。(『SF魂』新潮新書2006年)

作家たちがSFという表現を信じ、私たちに何を、どう伝えようとしたのか。SFがすでに日常に溶け込んでいるいまだからこそ、小松たちの世代が築き上げた表現世界の軌跡を、特に、次世代を生きる子どもたちに伝えたいと願って本展を企画しました。

世田谷文学館では、2006年「不滅のヒーロー・ウルトラマン展」2010年「星新一展」2012年「地上最大の手恷。虫」展を開催し、「日本SF」の魅力をご紹介してきましたが、本展ではそれらすべてを同じ空間で楽しんでいただければと思います。そして、「日本SF」の幅広さと豊かさを、あらためて感じていただくきっかけになれば、これ以上の喜びはございません。

 世田谷文学館 中垣理子





世田谷文学館
企画展「日本SF展・SFの国」
   2014年7月19日(土)〜9月28日(日)
http://www.setabun.or.jp/exhibition/exhibition.html



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