−日本古書通信−
掲載記事
(平成18年5月号)

 

ネット販売と
目録販売何が変ったの

神田・けやき書店
佐古田亮介
http://keyaki.jimbou.net/catalog/

 

 古本の売買は、ずっと古本屋が中心にあり、お客様は、売るにも買うにも、古本屋を通してしか売買の方法はなかった(一部に愛好家による交換会もあるが)。ところが、PCの普及により、多少古本の知識があってPCを使えば、誰でもネットで古本を販売できるようになった。革命的な事である。
 一口にネット販売といっても、ホームページあり、オークションあり、サイトに参加してなど様々だ。しかし、売るのは誰でもできるのであるが、仕入はどうする。古本売買で生活をしているのでなければ、在庫を売切れば終了だが、古本屋はそうはいかんだろう。即、食うにこまるからだ。ラーメン屋(回転ずし、ハンバーガー何でもよいが)にでもすぐ転換できれば心配ないが、まずそんな訳には行かない。古本屋は、仕入がなければ成り立たない商売である。売るものを製造していないし問屋もない。仕入は、客買い、市買い、背取りなどがある。その買い方全てに必要とされるのが、商品知識(目利)である。しくじったら儲けはない。めしが食えないのだキビシイぞ。
 店も持たず、外売もやらず、目録も出さずネットだけで売っている古本屋でも、仕入れる為に古書組合に加入してくる人は多い。それは、交換会(通称・市場)で古本を仕入れる事ができるからだ。もちろん売る事もできる。ネット上での買入れ広告でも、売ってくれるお客様はいるだろう。だが、売る側にも色々な考えがある。まずは信用できる古本屋であるかどうかだ。ちゃんと評価して買ってくれるのか。特に古本として筋の通った、価値の高いものを持っている人ほど、古本屋を選ぶだろう。店を構えていたり、定期的に目録を出していたり、デパート展、即売展に参加していれば、売ろうとしている人は、直にその店の古本の扱い分野や、商売のやり方、店主の人となりまで見聞することが出来る。ネットだけでは、間接的にしかわからない。この店になら売っても良い、というきっかけを作るには、店や外売や目録は、まだまだ十分有効だと思う。
 買うお客様の側から見れば、目的をもって探している本を入手するには、ネットはとても便利だ。でも、確たる目的もなく、ただ何となくおもしろいもの、興味を引くものを、探したりしている時は、店頭や紙の目録の方がありがたいのではないだろうか。第一、ネット上に全てがあるなんて思っていたら大間違いだろう。店頭でも、目録でも、ネットでも、皆が関心を持ち、欲しがっているものはアッという間に売切れてしまうものだ。誰もがネット上で売買できるようにはなった。しかし、古本商売の根本は何も変っていない。売れる商品をいかに安く仕入れ、高く売るかだ。うちの店で主に扱っている、初版本・限定本に関していえば、古本とは、スーパーやドンキで山積みにして売られているものとは、決定的に違う。まったく同じ商品が、ある人には、万金を積んででも手に入れたいものであっても、別のある人には、ただでもいらない本である。だいたいが古本屋はほとんどが個人商店で、店主のこだわりや資金力など、様々な理由により、扱う商品に違いが出てくるのがあたり前だ。ここが「ブックオフ」とはまるで違う。そうして、古本好きのお客もまた、ただ者ではない。ネットだ、目録だ、店だ、などとは、結局売買の見かけが違うだけで、本質は昔どおり何も変っていない。お客様と古本屋は、今日も明日も、勝負勝負なのである。古本病患者、バンザイ!

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