新着情報 2014年
ヘーゲル自筆本を一般公開
2014年11月3日
古本の競り市「古書交換会」のこと
=一冊の本の数奇な旅の終わりに寄せて=
東京都古書籍商業協同組合
広報部長 殿木祐介
実は、この「ヘーゲル自身が書き込んだ『差異論文』」、われらが東京古書会館に来るのは、今回で2回目です。
初めて来たのは2013年4月。この会館で毎日開かれている古書店のための古本の競り市「古書交換会」に出品されたのでした。
その時は、書込がヘーゲル自身の手によるものだとはわからず、ただ単に「書込のある『差異論文』」でした。そして、この会館で洋書専門古書店の手に渡り、さらには寄川教授の目に留まることになるのです。
では、この「古書交換会」とは何でしょうか?
古書の買い取りは古書店にとって最も重要な業務の一つですが、その状況は様々です。なかでも、蔵書家の死去や引っ越し、家の建て替えなどにより、トラック数台分にもなる大量の本を一度に引き取ることは珍しくありません。
古書店の多くは零細業者で、大量の本を分類整理する人手も、長期間保管する場所もないのが普通です。
また、古書の世界は広範な分野に渡っています。どの古書店主にも不案内な分野があり、的確な売価をつける自信がないこともあります。
そこで「古書交換会」です。
「古書交換会」には、古書店が自店で売らない本や買い取ったけれど置き場所のない本が持ち込まれます。そして、整理分類され、競り市方式によって他の古書店に売却されるのです。
各都道府県の古書組合が運営していますが、なかでも、神田古書店街の一角にある東京古書会館で開かれる「古書交換会」は、その開催回数、取扱高とも全国一であり、取り扱い品目によって6つの交換会があります。
以下、簡単に紹介してみます。
月曜日「中央市会」 ジャンルを問わず古書全般を扱う。
コミック、アニメ資料、アイドルほか芸能関係資料など
火曜日「東京古典会」 江戸時代以前の和本・写本
火曜日「東京洋書会」 外国語書籍全般
水曜日「東京資料会」 学術書・学術雑誌。学術資料
木曜日「一新会」 ジャンルを問わず古書全般を扱う
金曜日「明治古典会」 明治以後の近代文学初版本。小説家などの肉筆
毎日毎日、日本全国からこの会館に本が集まります。「市場メカニズム」の作用により、納まるべき古書店に納まった本たちは、ふたたび日本全国へ散っていくのです。今回のヘーゲル著作も「東京洋書会」に出品されたのでした。
今回、「ヘーゲル自身による書込のある」という輝かしい肩書きを得て帰ってきたこの本。来年には生まれ故郷のドイツに帰り、環境の整った書庫の奥に安住の地を得ることになったそうです。
この本の長い長い旅は終わりに近づいているようです。その途次にわたしたちの会館に再び立ち寄ってくれたことを、古書業者一同、大変うれしく思っています。
この本を、いや、どんな古書でも同じですけれど、こう言って迎えたいと思います。
「おつかれさま」
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