日本の古本屋


日本の古本屋メールマガジン

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     。.:*゜・☆*その6・6月24日号・*:.☆.
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◆INDEX◆
1.古本拡張計画
2. 本は高い方に流れる【その1】
3. 古本屋のエッセー
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■古本拡張計画■


「古本拡張計画」は古本を身近なものとして、親しんで
いただくためのプロジェクト。

「東京古書会館」の竣工を機に、会館を会場として
楽しいライブイベントや展示イベントを開催します。
また、東京古書組合を編者とする初めての新刊書も発行。
この夏は「古本拡張計画」から始まります。

●「古本カタログ」(晶文社)●
      東京古書組合 編
 152頁、A5判、定価1,890円

過去と未来の狭間に位置するちょっと不思議な空間である古本屋。
その書架から、色褪せない過去と懐かしい未来を対にして採集しま
した。17名の著名人によるエッセイも充実の、全ての本好きさんの
ための古本ビジュアルブック。お求めはお近くの新刊書店で。
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古本拡張計画イベント
*イベントはすべて終了いたしました。

●展示イベント●
・2003年7月6日(日)〜12日(木)
「過去からの本、未来への本」

・2003年7月13日(金)〜19日(土)
「乱歩が蒐めた書物展ー江戸川乱歩蔵書よりー」


・2003年7月6日(日)16:00〜
ホワイトマン・ショー「古本ラヂヲ」
本に関するラジオDJ風トークとパフォーマンス。

・2003年7月8日(火)18:00〜
「本屋さんのつくり方」
永江朗氏プロデュースのトークライブ。

・2003年7月11日(金)10:00〜
「詠み聞かせ」
壤晴彦主催・演劇倶楽部「座」による「怪人二十面相」

・2003年7月12日(土)13:00〜
「コージズキン’sTシャツ工房」
スズキコージ氏とTシャツに絵を描くワークショップです。

・2003年7月12日(土)15:00〜
「コージズキン’sトーク・ショウ」
スズキコージ氏によるトークライブです。
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■本は高い方に流れる その1■
水は低いほうへ流れるが、本は高いほうへ流れる

一度売ってしまえば次に市場に出るのは十年以上後、というようなレアな本ばかりを扱っている古書店が近所にある。

かつては専門店も、店売りで一般書を扱ってることが多かったが、昨今は目録販売などにに特化して、店を閉めてしまう人が多い。
この人も例外ではなく、ずいぶん前から無店舗化しているけれど、まだ往来の人びと相手に商売していたころ、棚に並ぶ幻のような本に驚いたお客さんに
「こんな本をどうやって仕入れるのですか。」と聞かれることがよくあったそうだ。

今日は、珍しい本がどうやって、その分野を得意としている店の棚にたどり着くか、「本は高い方に流れる」というお話である。

引越しを前に、本を片付けようと思ったあなたは、古本屋を呼んで引き取ってもらうことにした。
街に一軒しかない本屋に電話してみると、一応見に来るとは言ったが、相手は気難しそうなおじさんである。機嫌を損ねて引き取ってもらえないことになるといけないので、まずは、おじいさんが趣味でためた汚い雑誌を捨て、夫が学生のころ読んだ評論は小難しいので捨て、自分がかつて参考にしたファッション雑誌は意味がなさそうなので捨て、子供が小さいときに小遣いで買ったおどろおどろしい妖怪の本はくだらないので捨ててしまう。

残ったのは、セールスマンが夫の会社に売りに来てローンで買った世界美術全集。
毎月なべと一緒に送ってきて1年で完結した料理の本。
子供が小学生になったときに買った文学全集と学習百科。
全部、分厚い表紙のついた本だし、ほとんど読んでいないので、箱は色あせたけれど中身は新品同様だ。古本屋は、喜んで買ってゆくだろうか。

残念ながら、おそらくその本屋は回れ右して帰るだろう。
「捨てた方に価値がありました。」という言葉を残して。

さて、捨てた本はどうなっただろうか。よく観察していれば、朝早くごみ置き場に出したそれらの本が、少しずつ少なくなっているのにあなたは気づくはずだ。

まず、無精ひげを生やした五十代後半の男が、自転車の荷台に段ボール箱をくくりつけて現れ、おじいさんの雑誌をすばやく段ボール箱に放り込んで去っていった。
この男は、入手した本を公園で吟味すると、老人といってよいような店主が午前中から店番している本屋に持ってゆく。
なじみらしく、ふたことみこと会話して、数千円と交換に雑誌は店のものとなった。

実はその雑誌は、1冊数万円で取引されることもある戦前の少年雑誌だったのだ。その本屋は、数人の仲間と共同で出している古書目録に各一万円で、載せることにした。
普段その系統のものは載らない古書目録で顧客もいないが、ちゃんと注文があった。専門店がくまなく地方の目録を読んでいたのである。

夫が学生のときに読んだ評論を拾っていったのは、軽トラックに乗った男だ。老人の本屋はこういったものを高く買いそうになかったので、最近脱サラで開店したばかりのカタカナの名前の本屋に持ってゆくことにした。
あそこの店主はまだ若くて、難しい本が好きだった。

その本屋はうれしそうに本を買い取って、こんな本が落ちていたらまた持ってきてくれと繰り返し、頼んだ。その本は、美術史の成果を文学論に持ち込んだドイツ人思想家による著作の翻訳で、今はなかなか手に入らないものだ。若い店主は、30年ほど前に刊行された当時の定価の倍程度の値段をつけて、さっそく棚に並べた。

そこに現れたのは、隣の町で古くから店をやっている古書店主で、開店のときにいろいろ面倒を見てくれた人だ。
その人は、棚に並べられたばかりの本を見つけると、この値段じゃ安すぎだから、「俺が市場に出しといてやるよ」と言った。
実は若い店の方はまだ古書組合に入っていないのだった。

この本が、これからどういう運命をたどるか。また次回のメールマガジンでお話しよう。
bakaku
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■古本屋のエッセー■

【古本屋はパラノイアか?】
☆パラノイアには『妄想症・偏執症』という意味があるそうだ。
 古書月報の「パラノイア文献学」というテーマの本質を、医学史専門書店である泰成堂書店 池田 泰さんが読み解いた一本。

【古書月報編集後記】
永遠の開かずの間、乱歩“蔵の中の幻影城”の扉が開かれた。
展覧会、『蔵の中の幻影城』のレポートを含む、古書月報編集後記が登場。


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