日本の古本屋


日本の古本屋メールマガジン

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     。.:*゜・☆*その7・7月23日号・*:.☆.
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【日本の古本屋】は全国550書店参加、データ270万点掲載
の古書籍データベースです。
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関東地方の梅雨は長いようで、あいにくの空模様が続いています。
いかがお過ごしですか?
先日7月5日に約2年間の仮住まいを終えて、東京古書会館に戻って
まいりました。その後7月6日から7月19日まで、「古本拡張計画」
と題し、さまざまなイベントを行っておりましたが、たくさんの方に
ご来館いただき、大成功のうちに終了することができました。
ありがとうございます。
さて、古書会館建替え時には日本教育会館で行われていた即売展も25
日から新東京古書会館に戻ってきます。
しかも、従来通りの毎週金曜・土曜の即売展の他に、平日にも不定期
に即売展が開催される予定です。
7月・8月開催の即売展の予定は「即売展情報」でご確認ください。

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■本は高い方に流れる その2■
承前
珍しい評論を手に入れた若い古書店主は、丁寧にその本を棚にならべ
た。著作の年代順にしようかと、ちょっと迷ったけれど、デザインの
似た本を隣同士にした方が綺麗に見えるので、けっきょく出版社別に
並べた。
久しぶりに「骨のある」本が棚の一段を占めて、店全体の雰囲気も一
気に「知的空間」と化したような気がする。

そこへ現れたのは、隣町で数十年も営業している仮名A書店である。
「あんたんところに置いといても、こりゃなかなか売れないだろう。
 大丈夫、俺が市場に出しといたげるから。」
開店の時にも世話になった、いわば師匠にあたる人の事だから、
逆らうことはできない。
だけれど、並べてすぐ買っていくのは、あんまり殺生だ。
売るために仕入れたとは言え、せめて一月ぐらいは手元に置かせて
もらいたい。ざっと中を改めてから、店に並べるんだった。
ああ、買ってすぐ自慢げに人目に付くところに出してしまうとは、
なんて浅はかだったんだろう。

などと、いくら嘆いても後の祭りである。

若い古書店主の値付け通りにA書店に買い取られた評論は、関連書
10冊ほどの束に結わえられて、その県で月に2度ほど開かれる業
者の交換会(市場)に出品された。
落札したのは文学が専門で、県下ではもっとも目利きと評判の仮名
B書房である。落札価格は若い古書店主の付け値の2倍ほどであっ
た。
しかし、B書房は自分の店には並べず、数百人が集う東京の市場に
送ってしまったのである。

なぜなら、仮名B書房は、自分の顧客でもある地元研究者C氏が東京
の専門店数軒にそれらの本の探求依頼を出していることを知っていた
からである。
専門店は競争で入札するから、もしかしたらかなりの高値になるかも
しれない。
そんな値段をB書房氏本人はC氏に言う勇気を持たない。
しかし、それなりの店が付ければ説得力があるものだ。
実際そういう値段で取り引きされたのだから、C氏は納得して買い取
るに違いない。

しかし、その本を探しているのはC氏だけではないかもしれない。
多くの顧客が専門書店に探求依頼を出していて、順番待ちなどという
ことも珍しくない。

商品収集力があるというのが専門店の専門店たる理由だ。
だから研究などでどうしてもその本を必要とする人は専門店に相談する。
それがもっとも高い確率で希少本を手に入れられる方法だからだ。
安く手に入れたければ、専門店以外で探すことになるが、運良く
出会えるのは何年先のことになるかわからない。
あちこちの書店や、即売会場を回るのも大変な労力で、それが好きな人
以外は能くなしとげない事だ。
そういう時間と手間を古書の流通網は代行しているのである。

本は高い方へ流れる。しかし、ただ闇雲に値をつり上げている訳では
ない。その本をもっとも必要とする人の手に届けるための、緻密な
流通システムなのである。

まだ、妖怪の本と、ファッション雑誌の話が残っていた。妖怪の本は
「セドリ」氏の手に渡って長い旅をすることになり、雑誌は故紙の集
積所「タテバ」から復活をしてアパレルメーカーの資料室に納まるこ
とになる。
その話をするつもりだったが、あまりに長くなるのでやめた。
いつかまたの機会に譲ろう。
文:bakaku
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