日本の古本屋


日本の古本屋メールマガジン
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   。.:*゜・☆*その32・10月20日号・*:.☆.
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◆INDEX◆
1.自著を語るその9・『思い出に誘われるままに』
2.「BOOK TOWN じんぼう」が10/21(金)にOPENします。
3.「櫻井均と櫻井書店の昭和」展
4.「古本屋が書いた本」展目録
5.日本の古本屋即売展情報

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「自著を語る」コーナー、今回は櫻井毅氏に「出版の意気地−
櫻井均と櫻井書店の昭和」(西田書店刊)について語って
頂きました。

櫻井書店は、1940年代、すなわち戦時中から戦後すぐに
かけて加納作太郎の『世の中へ』や里見トンの『閑中忙談』、
宇野浩二の『夢見る部屋』、上林暁の『晩春日記』等のマイ
ナーポエット的良書を次々に刊行していった版元であり、若
き日の山本夏彦氏が短期間とはいえ、その編集部に籍を置き、
彼の最初の著書(翻訳書)である『年を歴た鰐の話』を出版
したことでも広く知られている。

昭和の出版史に名を刻んだ櫻井書店とその店主・櫻井均氏の
足跡を追った一冊である。

■「思い出に誘われるままに」■

 今度の本『出版の意気地』を執筆しながらいつも思ったのは、
父は本当に本が好きだったということだ。出版はもちろんの話
だが、本屋を歩くのもとても好きだった。新しいどんな本が出
ているか、それを確かめずにはいられない。そして古本屋を歩
く。今までどんな本が出ていたのか研究を怠らないというとこ
ろか。実際、晩年、出版をやめて久しくなった頃も、まだ改築
する前の古書会館で行われていた古本の市に本を探しに行った
ことが何度もある。ほとんどが大正時代の本だったような記憶
がある。手に入れた本を開いて読みふけっていた父の姿が思い
出される。

 父は時にそういう古本屋歩きに私を連れてってくれたことが
ある。それは私が中学二、三年の頃だったろうか。行くところ
はほぼ神田に限られる。もちろん用事で郊外の駅に降りればそ
この古本屋はたいていのぞく。銀座の夜店の古本屋なども冷や
かした記憶もある。そういうわけで私もいつの間にか古本屋め
ぐりは欠かせなくなっていた。私の職業のせいもあったが、始
終、神田の古本屋を歩き回っていたので、神田のどこどこの店
へ行けば、その本は左側の一番上の棚の右から十冊目あたりに
あったはずだ、などと一時は人に教えられるほどであった。

 自分の家が出版をやっていたせいか、私は本に囲まれた生活
が本当に気を落ち着かせてくれたものだ。返品の山の倉庫の中
で、私は本に読みふけっていたことが何度もある。誰にも邪魔
されないそんないい場所は他にはなかった。今でも懐かしい思
い出だ。本を抜きにしては私の生活もなかった。今でも本の中
にいると不思議に心が落ち着くのである。

 本を作る仕事はいつも私の直ぐ目の前にあった。著者も、印
刷屋も、製本屋も、広告屋も、取次屋も始終家に出入りしてい
て、事務や営業の場所と同じ敷地に住んでいた我々はしばしば
それらの人と顔をあわせることがあった。だから今度の本を書
くときも、出版の現場の生々しい雰囲気をいつも感じながら書
くことが出来た。父は仕事と家庭とを分けてはいたが、おのず
から洩れてくることもあるし、積極的に父が語ることもあった。
その多くは今度の本の中に書いてはあるが、その他にも美しい
装丁の刷り見本が出来上がったときなど、「どうだ、綺麗だろ
う」と家族にも見せてくれた記憶など今も鮮明である。

 私は今度の著書が、戦中戦後の出版界の状況を櫻井書店の歴
史を通して知るということだけでなく、出版や本そのものの製
作についての一般的興味をかき立ててくれればありがたいと思
っている。今日では本は文庫本や新書やマンガに代表されるよ
うな大量生産、大量消費の対象になるようなものが市場の多く
を占めるようになっているが、本作りは、もともと個人的な仕
事であり、著者や編集者、出版者など個人の個性と個性がぶつ
かり合う個性的な共同作業なのである。内容についてはいうま
でもないが、それは判型や装丁などにも現れる。

 このたび、古書組合の強力な後援を得て、西田書店による
「櫻井均と櫻井書店の昭和」の展示会が開催されることになっ
た。そこで昔の櫻井書店の刊行した本のいくつかを、それに関
係する装丁の原画や挿絵の原画、著者の手紙などの参考資料と
ともに展示する機会を得ることになったが、そういう中で出版
の手作りの作業の一端を見ていただければ有難いと思う。この
展示会を機会に古書に対する関心と古書の愛好家がますます増
えることを期待したい。

■櫻井 毅(さくらい つよし)■
1931年東京に生まれる。東京大学大学院卒。
武蔵大学教授、武蔵野大学学長を経て現在武蔵野大学名誉教授。
主な著書として、
『生産価格の理論』(東京大学出版会,1968年)
『経済学史研究の課題』(御茶ノ水書房、2004年)
『イギリス古典経済学の方法と課題』(ミネルヴァ書房、1988年)

■『出版の意気地−櫻井均と櫻井書店の昭和』■
著書 櫻井 毅
発行:西田書店
判型:四六判
ページ数:213ページ
定価:1,680円(本体:1,600円)
ISBN:4-88866-406-4
(株)西田書店
http://www.nishida-shoten.co.jp

坪内祐三氏推薦  好評発売中!

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■BOOK TOWN じんぼう■

本の街・神田神保町の新しいポータルサイトが10月21日(金)
にいよいよOPEN!!

ジャンル別神田古書店案内の「ジンボウナビ」・古書店在庫
を一括検索できる「古書データベース」・「本と街のイベント
案内」を三本柱として、様々な書籍関連の情報や千代田区の
地域広報に努めます。

10月28日(金)から始まる『東京名物神田古本まつり』の情報
もアップしております。是非ご覧下さい!!

http://jimbou.info/

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■「櫻井均と櫻井書店の昭和」展■

□□櫻井毅著「出版の意気地」刊行記念展示会□□

◆開催日時 2005年10月21日(金)−10月26日(水) 
      午前10時から午後18時
   ●初日(21日)午後2時から、櫻井毅氏のミニ講演
◆会場   東京古書会館2階情報コーナー
◆主催   (株)西田書店
◆後援   東京都古書籍商業協同組合


■■展示概要■■
 太宰治の未公開書簡や山本夏彦『年を歴た鰐の話』に
寄せた武林夢想庵・佐藤春夫の生原稿、熊谷守一、中川一政、
棟方志功、福田平八郎、青山二郎など錚々たる画家による
装丁本を公開展示。

http://www.kosho.ne.jp/event/sakuraishoten/

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■「古本屋が書いた本」展目録■

2005年4月21日から4月24日まで東京古書会館にて行われました
「古本屋が書いた本」展に合わせて目録を発行いたしました。
http://www.kosho.ne.jp/event/chosaku.htm

B5判、52ページ、700点以上もの著作を掲載。
1部500円(+送料210円)。

まだ残部がございますので、ご希望の方は、
本代500円+送料210円合計710円分の切手を同封のうえ、
郵便番号、住所、氏名、電話番号を明記のうえ郵便にて下記
までお申し込み下さい。

101-0052
東京都千代田区神田小川町3-22
東京古書組合・広報部 

まで。

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■日本の古本屋 即売展情報■

11月〜1月の即売展情報。
http://www.kosho.or.jp/servlet/sokubai.ksB001

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次回は2005年11月下旬頃発行。
お楽しみに!
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     *全古書連は全国古書籍商組合連合会の略称です。

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日本の古本屋メールマガジンその32 2005.10.20
【発行】東京都古書籍商業協同組合:広報部・事業部・TKI
     東京都千代田区神田小川町3ー22 東京古書会館
     E-Mail melma@kosho.ne.jp (メールマガジン専用)
     URL http://www.kosho.or.jp/
【発行者】
広報部:中野照司 藤原栄志郎
事業部:田中隆志
TKI:岩森正文

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