「自著を語る」コーナー、今回は岡崎武志氏に「気まぐれ古書店
紀行」(工作舎刊: http://www.kousakusha.co.jp/ )
について語って頂きました。
古書関連も含め幅広い執筆活動を続ける岡崎武志さんが、月に1回
これまで行ったことのない古書店を目指して、全国の古本屋さんを
巡ります。1998年から2005年までの『彷書月刊』誌、人気
連載の集大成です。( http://www3.tky.3web.ne.jp/~honnoumi/ )
■自分史にもなっている『気まぐれ古書店紀行』■
このたび、工作舎さんより『気まぐれ古書店紀行』を出させても
らった。「彷書月刊」に現在も連載中の「均一小僧の気まぐれ古書
店紀行」の八年分がとりあえずまとまることになった。開始は一九
九八年の一月号。栄えある第一回目の訪問は、東京・大森の「天誠
書林さん」。以来、毎月、北は北海道・札幌から南は九州・熊本ま
で、日本全国の古書店を訪ね歩いては報告してきた。この本の最後
は二OO五年の十二月号で、仙台・萬葉堂書店を取り上げている。
本にしてもらうことが決まるまで、自分の連載原稿を読み返すこ
もなかった。ゲラになったものを通読して、我ながら、なんて面白
いんだと驚いた。つまり、この本には、古書や古書店のことだけで
なく、私のライター人生の八年間が集約されている。自分史にもな
っているのだ。そこが自分にとって「面白い」。これまで十冊以上
の本を出してきたが、こんなことは初めてだった。
昭和三十年親書ブーム、大阪モダニズム、日本に帰化した建築家
ヴォーリズ、ユーモア小説、NHK「とんち教室」、山の本、リチ
ャード・ブローティガン熱など、そのときどきにマイブームについ
ても、この本のなかで紹介されている。それもいまでは懐かしい。
一回、四百字約五枚という枚数を、古書店訪問だけではとても埋
まらない。第一、店主には基本的に取材だと断らず、一般の客とし
て訪れようと決めて始めた連載なので、どうしても店以外の話で埋
める必要が出てくる。店の客と店主とのやりとり、あるいは家族旅
行を犠牲にしての我が古本馬鹿ぶり、古い建物や鉄道廃線跡探訪な
ど、あの手この手が使われている。たぶん、「古書店紀行」という
だけじゃ、百回近くも続かなかっただろうと思う。そのあたりを汲
み取って、読んでいただけるとありがたい。
また、単行本化の際に「彷書月刊」編集部で、本に登場する古書
店約三百数十店を最終チェックしてもらったところ、一割から二割
がすでに廃業、あるいは移転、ネットへ移行など、原稿掲載時とは
変わってしまっていることがわかった。この八年の、古書業界の栄
枯盛衰がそこに映し出されている。甲府・城北書房、吉祥寺・火守
文庫、神戸・黒木書店、川越・ぎやまん堂(廃業)など、いまは無
き店舗の写真も含め、本書が日本の古書業界の一つの記録性を持つ
ことは、少しだけ誇っていいのではないか。
今回の本にはあれこれ仕掛けのあることも特徴の一つ。カバーの
袖に自筆の四コママンガがあったり、本文には、これまた自筆その
ままの傍線や書き込みがされてある。古書にはよく前の持ち主が傍
線を引いたり、落書きをしているが、それを著者がやってしまおう
というのである。遊び心のあふれたこの本を、どうぞ楽しんでくだ
さい。
■岡崎武志 おかざきたけし■
1957年大阪府枚方市生まれ。ライター、編集者。
「均一小僧」「文庫王」「神保町ライター」のニックネームをもつ。
立命館大学を卒業後、国語教師を7年間勤めた後、90年に東京に
移住。
以後、新聞・雑誌などで書評を中心に執筆活動を続ける一方、ラジ
オ番組、大学講座などでも活躍。書物ミニコミ誌『sumus』同人。
古本では私小説、ユーモア小説、演芸、出版マスコミなどの分野を
収集する。
著者に『文庫本雑学ノート』(ダイヤモンド社)、『古本病のかか
り方』(東京書籍)、『古本でお散歩』『古本極楽ガイド』『古本
生活読本』(以上ちくま文庫)、角田光代氏との共著『古本道場』
(ポプラ社)などがある。
■『気まぐれ古書店紀行』■
著者:岡崎武志
発行:工作舎( http://www.kousakusha.co.jp/ )
2006年2月発行
定価:2,415円(本体:2,300円)
ISBN:4−87502−391
判型:四六判
ページ数:432ページ
次回のメルマガは日本古書通信社、樽見博さんの
「古本通-市場・探索・蔵書の魅力」
(平凡社 http://www.heibonsha.co.jp/
2006年4月10日発売 定価700円 208ページ)です。
ご期待下さい!
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