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「自著を語る」コーナー、今回は志賀浩二氏に「古本屋残酷物語」
(平安工房( http://www.heian-koubou.biz/ )
について語って頂きました。
■あなたがいたから僕がいた■
揚羽堂、啼く
小生、古本屋になって3年目、組合に入って2年目の、銭・車・店
舗・経験・知識・血筋…何も持たない最下層の古本屋【古書窟揚羽
堂】でございます。そんなやつがれの哀しい日記がこの4月に1冊
の本となって平安工房というところから出版されました。いったい
何処の誰が出してくれたのか?平安工房って何なのか?
古書わらべ、起つ
私が所属する東京古書組合・南部支部の同期に民俗学専門店【古書
わらべ】さんがいる。彼はなんと今年23歳!(小生、当年とって
37歳であるから、その年の差、実に14歳!)しかし、彼の本当
の恐るべきは若さではない。その行動力にある。自分の本を出して
みたい、と夢想した青年は、出版機関【平安工房】を立ち上げ、去
年の夏、すでに1冊、民俗学の叢書を出している。そして、次のス
テップとして自分の出版物を拡販しようと「地方・小出版流通セン
ター」に取引を依頼しに行った時、「一年で3冊以上、出版しない
とダメ」という規則があった為、とりあえず次の何かを出版しなけ
ればならない必要があった。そこで白羽の矢を立てたのが、小生が
楽天ブログで綴っていた「古本屋残酷物語」だったのである。彼の
審駄眼に大きく感謝!でも、内容的にほとんど古書の事が出てこな
いこの日記。まぁ、あんまり売れないだろう。
石神井書林、燃ゆ
しかし、せっかく本を出すのだから少しは彩りをつけたい。そこで
跋文(あとがき)を心・技・体、完全装備・近代詩のフルメタルジ
ャケット【石神井書林】の内堀さんにお願いした。その当時、内堀
さんと一度しかお会いした事が無かった私が何故、そんな図々しい
お願いを出来たかというと、実は内堀さんがボクの日記を密かに読
んで喜んでくれている、という仰天情報を【月の輪書林】さんから
入手していたからだ。お願いするにあたり月の輪さんも毛筆のお願
い状を書いて下さった。即、快諾の葉書を下さった内堀師匠。やは
りヒトカドの人物とはこういうものなのだ、と分不相応に感心する。
しかし、本当に感服するのはこれから。出来上がった、拙著の巻末
を彩る「吹きさらしの日々」と題された4Pの跋文。とにかく目玉
から心に風が吹き抜ける名文である。こんな素晴らしい跋文をいた
だいてしまい、小生の拙い2005年の生きザマを綴ったこの日記
が、ものすごくイイ物語になってしまった気がする。
そして今…
ソフトカバー、231Pの薄さで定価が二千円+税。決して妥当な
価格ではあるまい。にも関わらず、おかげさまで初版一刷り三〇〇
部は発売と同時に無くなり、今、二刷り(五〇〇部)が売られてい
る。版元わらべ氏も損をせずに済んだようだ。しかし、輝く星にも
寿命があるように、購買者数にも限りはあるだろう。ましてや冴え
ない古本屋の日記である。版元曰く、今現在、三刷りの考えはない、
という。今、世に散る八〇〇部がせいぜいイイ数字だろう、と分析
しておられる。ウゥム…流石、ホット&クールな青年実業家である。
私が覚えたての自慰に耽っていた頃に彼がオギャアと生まれた、と
いう14年間の年月にハンディキャップは不要なのだ。やはりヒト
カドの人物とはこういうものなのだ、と分不相応に感心する。
という訳で、「古本屋残酷物語」、ご購入をお考えなら早い方が宜
しいか、と思います。
最後に内堀師匠の跋文より、一行だけ抜粋。
「勘のいい古本好きならすぐに気づくはずだが、こういう本が将来
古本屋で高くなるのだ。」
■志賀浩二 しがこうじ■
昭和44年宮城県生まれ。
東北高校卒業。
34才の時、「古書窟揚羽堂」オープン。
1年で店舗販売に限界を感じ、ネット専門店に路線変更。
現在に至る。
趣味は飲酒。
■『古本屋残酷物語』■
著者:志賀浩二( http://plaza.rakuten.co.jp/agehado/ )
発行:平安工房( http://www.heian-koubou.biz/ )
2006年4月発行
定価:2,100円(本体:2,000円)
ISBN:4−902817−01−2
判型:B6判
頁数:231ページ
☆次回のメルマガ『自著を語る』は、イラストルポライター・内澤
旬子さんの「センセイの書斎」(A5判 163頁 2,310円
発行:幻戯書房 http://www.genkishobou.com/ 発売中 )です。
ご期待下さい!
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