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【活字の周辺】
■『秋山清著作集』をめぐって■
久保 隆
(『秋山清著作集』編集委員)
秋山清(1904〜88年)は、戦時下に書かれた一連の詩篇
「白い花」が、後に、“詩的抵抗の最高の達成”として吉本隆明に
評価されたアナキスト詩人である。戦前から、アナキズム運動に深
く関わっていて、46年6月、日本アナキスト連盟の結成に尽力し、
機関紙『クロハタ』(後に『自由連合』と改題)には、68年末の
解散時まで絶え間なく健筆を振った。また、あらたな民主主義文学
の創造を旗印に創刊された雑誌『新日本文学』(45年12月)に
翌春から参加するも、そこでの党派主義的運営に疑義を呈して、政
治と文学の対立をめぐる位相を見事に切開した著書『文学の自己批
判』(56年10月刊、秋山清名義としての最初の著書である)は
刊行時、多くの共感を得た。
46年5月、金子光晴、小野十三郎らとともに同人詩誌『コスモ
ス』を創刊する。創刊同人のうちただ一人秋山だけが、最後まで
『コスモス』に関わっていき、終刊号となった通巻101号(89
年10月)は、「秋山清追悼特集」であった。これら、アナ連、新
日文、コスモスが、秋山のいわば表舞台としての活動の場であった
わけだが、もとより、秋山の営為は、その交流の幅とともに、より
拡張された方位を獲得していくこととなる。
60年安保闘争時、吉本隆明、埴谷雄高らとともに六月行動委員
会に参加し、闘う。66年、ベトナム反戦直接行動委員会のメンバ
ーによる軍需工場襲撃事件への支援は特筆すべきことだ。裁判支援
のため、戦時下の作品が初めて詩集『白い花』(解説・吉本隆明
「抵抗詩」)として編まれて刊行(自身二冊目の詩集にあたる)。
ベ反委の衝撃的な行動は、その後の新左翼諸派の反体制運動、全共
闘運動へと連繋していくものであった。そして、60年代末から7
0年代初頭にかけての反権力・反体制の大いなる渦動の中で、秋山
清は、より多くの新しい読者を引き寄せていった。
著作でいえば、幸徳、大杉以後の退行する戦前のアナキズム運動
までも深く射程に入れて論じた『日本の反逆思想』(60年11月
刊、68年4月新版刊)であり、大正期の労働運動社やギロチン社
に集う人々の思考と方向の確かな反攻と抵抗のモニュメントを活写
した『ニヒルとテロル』(68年6月刊)であり、そして漂流する
抒情画家の評伝『竹久夢二』(68年8月刊)である。これらは、
秋山の思想と表現の基層をなすものであり、さらにいえばわが国に
おける自存する闘いの方途へと敷衍させてくれる重要な著作群だと
もいえる。だが、長らく、秋山清の著作は詩集を除けば、品切れ絶
版状態にあった。
わたし(たち)は、徐々に内閉しつつある現況に対して、すこし
でも、通路を切開していくためにこそ、秋山の著作の数々を提示す
る必然に思い至ったのである。過去の著作をただ遺産のような想い
で刊行するといった考えは、初めからわたし(たち)にはない。未
知の読者が手にとって、そこに記されている秋山のセンシブルな言
葉、文章が、現在においても際立って切迫してくるはずだという確
信をもっていたからこそ、著作集の刊行を企図したのだといっても
いい。
いま、全巻完結して、わたし(たち)は、安逸な想いに浸っては
いない。これから、秋山の仕事を、現在という場所から、あらため
て評価するという大事な作業が眼前にあるからだ。
■久保隆(くぼ・たかし)■
『秋山清著作集』編集委員、評論家。
1949年秋田県生まれ。中央大学法学部卒。
著書 『戦後アナキズム運動試論』
『吉本隆明ノート』
『権藤成卿論』
『加藤泰の映画世界』(共著)
『山野記』(共著)
『吉本隆明論集』(共著)など。
ブログ「久保隆・書評集」http://kubo1123.cocolog-nifty.com/
※『秋山清ワールド(秋山清著作集Website)』
http://www.pal-book.com/akiyama/
『秋山清著作集』全11巻・別巻1は、今春完結、全巻発売中。
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■古本・夜の学校VOL3
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秋山清と戦後アナキスト聯盟
講師 大沢正道氏
日にち:5月26日(土)
時間 :午後2時〜4時(開場1時半)
場所 :東京古書会館七階 木戸銭 500円
協力 :トスキナアの会
主催 :東京古書組合広報部
要予約:参加ご希望の方は下記のホームページよりお申し込み下さい。
http://www.kosho.ne.jp/event/yagaku/
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■軒下の小さな古本祭――外市――■
東京北部支部 古書往来座
代表 瀬戸雄史
まず最初に告白してしまいたいことがあります。5月5日土曜日
と6日日曜日に第2回目が開催される、当店軒下を利用した小規模
古本・雑貨市、外市、は、ぼくにとって今のところ、「軒下の小さ
な古本祭」以上でも以下でもありません。果たしてそれが新しい動
向なのか、何か既存のものへの不満をくつがえす有効なものなのか、
実のところ、わかっていません。動機らしい動機といえば、ただひ
たすらに「楽しそう」だったから、と言うしかありません。あ、そ
れは打ち上げのビールがおいしいでしょうね、と意気込んだのであ
りました。
続きはこちらへ
http://www.kosho.ne.jp/melma/magazine20070425_2.htm
池袋(古書往来座前)で開催される第二回外市は5月5〜6日。
詳しくは http://ouraiza.exblog.jp/ をご参照下さい。
また、街歩きをしながら古本探しを楽しめる第四回不忍ブックスト
リートの一箱古本市は4月29日に開催されます。
(http://sbs.yanesen.org/)
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■小林かいちと大正イマジュリィの絵葉書たち■
日にち:5月25日(金)〜29日(火)
時間 :午前10時〜午後6時
場所 :東京古書会館2階ギャラリー
入場無料です。
大正の抒情絵葉書を中心とした展覧会を開催いたします。明治33
(1900)年に解禁された私製はがきの使用からはじまる「絵葉
書」というあたらしいメディアムーブメントは、大正時代に入って
若者文化が成熟するとともに、「抒情絵葉書」というジャンルを確
立しました。この展示では、絵葉書の発展の歴史とともに、「抒情
絵葉書」に焦点をあてて展覧いたします。
特に謎の絵師・小林かいちの小展示は、7月に開催される小杉放菴
記念日光美術館(日光市)の回顧展直前のプレビューともなります。
ぜひ、この機会にご覧下さい。
■トークショー「幻の絵師・小林かいちを語る」■
昨今注目される絵葉書絵師「小林かいち」とは何物なのか。
そのデザインの魅力とともに語ります。
※要予約 有料です。
詳しくはホームページ内でご確認ください。
http://underg.cocolog-nifty.com/tikasitu/2006/08/2_ed0f.html
その他にも多数イベントがございます。
■アンダーグラウンド・ブック・カフェ■
5月27日〜29日 東京古書会館地下ホールにて開催いたします。
詳しくはホームページ内でご確認ください。
http://underg.cocolog-nifty.com/tikasitu/
皆様のお越しをお待ちしております!
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