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■古本暮らし■
荻原 魚雷
今年の五月に『古本暮らし』という本を晶文社から刊行しました。
装丁は間村俊一さん、装画は林哲夫さんです。
わたしは週四日アルバイトをしながら主夫業のあいまにときどき
原稿を書いているフリーライターです。中央線沿線を中心に年三六
〇日くらい古本屋に通っています。
大学時代に『評伝辻潤』の著作で知られる故・玉川信明さんの大
正思想史研究会という勉強会に参加し、アナキズムや辻潤の本を読
むようになり、辻潤から吉行エイスケ、その息子の吉行淳之介、そ
れから第三の新人や「荒地」の詩人といったかんじで文学や詩に興
味をもつようになりました。
また上京後すぐフリーライターの仕事をはじめたものの、人に会
うのも電話をかけるのも苦手だったので、だんだん仕事がなくなり、
三十歳くらいまではPR雑誌の編集をしたり、座談会や対談をまと
めたり、校正やテープおこしのアルバイトをしながら、ひたすら食
いつなぐことが目標の日々でした。お金がはいると、古本を買い、
お金がなくなると、古本を売る。そのくりかえし。
そんなときに高円寺の飲み屋で知り合った岡崎武志さんに『su
mus』という同人誌にさそってもらい、私小説のことや私生活の
ことを書いた文章を発表するようになりました。もし『sumus』
に参加していなかったら『古本暮らし』が刊行されることもなかっ
たとおもっています。
『古本暮らし』の内容を簡単に説明すると、第一章では本の整理、
本の売り買い、読書生活のいきづまりに関する試行錯誤をつづった
エッセイ、第二章は西山勇太郎、天野忠、鮎川信夫、古山高麗雄、
吉行淳之介、色川武大、神吉拓郎といった自分の好きな詩人や作家
についての評論、第三章は、酒やタバコ、料理、家事にまつわる身
辺雑記をおさめています。
つい先日、増刷(二千部)が決まりました。無名の新人のエッセ
イ集としてはめずらしいことだと担当者の中川六平さんにいわれま
した。中川さんはこれからも新人の本を作りたいといっていたので、
『古本暮らし』がコケなくてほんとうによかったとほっとしていま
す。
今、わたしは三〇代後半ですが、同世代やさらにもっと若い古本
好きの生活というのは、あんまり知られていないのではないでしょ
うか。よく「若者の活字離れが」云々といわれたりするけど、たと
えば、今二〇代の本好きが書店や図書館で働こうとおもってもなか
なか正社員や司書になれないという現実があります。きびしいです
よ、若い読書人の生活は。
わたし自身、この先どうなるかわからないけれど、仕事と読書、
あるいは読書と生活を両立していく道を模索しつつ、古本のおもし
ろさを若い人に伝えていけたらとおもっています。
■古本暮らし■
著者:荻原魚雷
発行:晶文社( http://www.shobunsha.co.jp/ )
2007年5月発行
定価:1,785円(本体:1,700円)
ISBN:978−4−7949−6710−7
判型:四六判
頁数:224ページ
■荻原魚雷 おぎはら・ぎょらい■
1969年三重生まれ。
著書に『借家と古本』(スムース文庫、コクテイル文庫)、編著に
『吉行淳之介エッセイ・コレクション』(全4巻、ちくま文庫)が
ある。
ブログ「文壇高円寺」 ( http://gyorai.blogspot.com/ )も公開中。
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■小林かいちと大正イマジュリィの絵葉書たち■
日にち:5月25日(金)〜29日(火)
時間 :午前10時〜午後6時
場所 :東京古書会館2階ギャラリー
入場無料です。
大正の抒情絵葉書を中心とした展覧会を開催いたします。明治33
(1900)年に解禁された私製はがきの使用からはじまる「絵葉
書」というあたらしいメディアムーブメントは、大正時代に入って
若者文化が成熟するとともに、「抒情絵葉書」というジャンルを確
立しました。この展示では、絵葉書の発展の歴史とともに、「抒情
絵葉書」に焦点をあてて展覧いたします。
その他にも多数イベントがございます。
詳しくはホームページ内でご確認ください。
http://underg.cocolog-nifty.com/tikasitu/
皆様のお越しをお待ちしております!
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