━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ブックオフと出版業界■
小田 光雄
『ブックオフと出版業界』の新版を出すにあたって、かつて石神
井書林の内堀弘氏からインタビューを受け、『古書月報』の200
0年6月号に掲載された記事を再録できて、とてもよかったと思っ
ています。危機の中にある出版業界がどのような状況に向かってい
るのか、予断を許さない段階に入っていることは間違いないでしょ
う。それに抗するために現在ほど古書業界との連帯が求められてい
る時もないと考えられるからです。もちろん出版者としても読者と
してもです。とりわけ読者としてはささやかな金額でしかありませ
んが、これから使える金はすべて古書に向けるつもりでいます。
『ブックオフと出版業界』にこれも新たに収録した「ブックオフ
の現状−2000年〜2008年」を書き進めながら、あらためて
怒りが湧き上がってきたからです。ブックオフの株式上場のための
公開資料を分析して明らかになったのは、新刊書店業界も古書業界
も意図的に狙い撃ちされ、食われてしまったという事実でした。詳
細は読んでもらうしかありませんが、そのアウトラインだけを述べ
れば、ブックオフはCCC(TSUTAYA)と連携し、出店を促
進してきたのです。両者をつなぐキイワードがフランチャイズで、
ブックオフの本質がフランチャイズによる利益追求だと本書で詳述
しましたが、それをブックオフに伝授したのはCCCなのです。つ
まりブックオフとCCCは盟友として、他業界から書店と古本屋に
挑んできたことになります。
今回明らかになった構図は次のようなものです。CCCのフラン
チャイズメニューはCD・ビデオレンタルのTSUTAYA、雑誌
書籍販売のTBN、古本リサイクルのブックオフの三本立てであり、
CCCルートでブックオフのかなりの出店展開が行われたと見て間
違いないでしょう。したがってCCCは一方で書店を、もう一方で
古本屋をターゲットにして成長し、上場企業へと躍進したのです。
しかもCCCのフランチャイズによる成長を支えたのは日販であ
り、日販こそがCCCの金融と物流を担ったのです。この両者の関
係も謎に包まれています。
そして当然のことながら、日販はCCCがブックオフの出店を兼
ねていたことを知っていたことになります。このような事実からす
れば、ブックオフとCCCと日販が三位一体になって、書店と古本
屋つぶしを行ったと考えざるを得ません。まったく溜息の出るよう
な話です。
これらの背信的な事実を突きつけた本書が刊行されても、出版業
界や日書連から何の抗議の声も上がっていません。そのような声す
らも上げられない状況にまで追いつめられているのでしょうか。
本書は『出版業界の危機と社会構造』『出版社と書店はいかにし
て消えていくか』を加え、「出版状況論三部作」を形成しています。
『ブックオフと出版業界』だけではわからない部分もあると思いま
すので、この機会に三部作を通読頂ければ幸いです。
なお古本屋で買い求めた本や雑誌から始まる古本エッセイを数千
枚書きためましたので、順次刊行していくつもりです。そしてこれ
らをもって、古書業界へのエールにしたいと考えています。誰も書
かなかったような古本エッセイばかりですので、ご期待下さい。
□□ブックオフと出版業界□□
著者:小田 光雄
発行:論創社( http://www.ronso.co.jp/ )
2008年5月発行
定価:2,100円(本体:2,000円)
ISBN:978-4-8460-0774-4
頁数:278頁
◇◆小田 光雄(おだ・みつお)◆◇
1951年静岡県生まれ。出版業に携わる。『日本古書通信』に
「古本屋散策」を連載中。著書『〈郊外〉の誕生と死』など。
訳書『エマ・ゴールドマン自伝』など。
6月から論創社ホームページ( http://www.ronso.co.jp/ )で
「出版状況クロニクル」連載を始める。
|