━━━━━━━━━━━【自著を語る(40)】━━━━━━━━━━
『古書の森 逍遙』
黒岩 比佐子
「古書の森」というのは、私が2004年の秋から書いているブログ
のタイトルである。その年、『「食道楽」の人 村井弦斎』(岩波
書店)という評伝を上梓したが、本には書けなかったことや使わな
かった資料もたくさんあった。せっかくなので忘れないうちにどこ
かにメモしておこう、と思ったのがきっかけで、次第に、ほぼ毎週
通っている古書展で購入した本の雑感を書くようになった。
工作舎のIさんから、このブログを本にしたいというお話をいた
だいたとき最初に思ったのは、誰でも無料で読めるブログをそのま
ま本にしても売れないだろう、ということだった。しかし、気がつ
けば6年間で約770冊の古書・雑書について書いている。これをパソ
コン画面で全部読むのはつらい。しかも、ブログでは買った本をそ
の時点で取り上げているので、順不同に並んでいるだけだ。
出来上がってみれば、『古書の森 逍遙』は著者の私が驚くほど
ブログとは違うものになった。Iさんが770冊から220冊を選び、そ
れを出版年の古い順に並べ直したことによって、私が関心を抱いて
きたテーマや、出版文化の流れが浮き上がってきたのである。
古書マニアの方々には笑われそうだが、私がブログで取り上げて
きた本の大半は、わずか数百円で買える雑本にすぎない。だが、雑
書には雑書なりの面白さがあり、思いがけない発見もある。そんな
ある日、〈古書を古読せず、雑書を雑読せず。〉という言葉に出会
った。これは明治・大正の実業家で、社会事業や公共事業に尽した
金原明善の言葉だが、まさに我が意を得た思いだった。拙著で雑書
の魅力を知っていただければ、これほどうれしいことはない。
最後に、私のブログは現在、闘病記のようになっているが、また
古書展通いを再開して、本来の「古書の森」として書き続けたいと
願っている。病状を気遣ってくださっている方々と、応援のメッセ
ージをくださった方々すべてに、この本を感謝とともに捧げたい。
<作家・黒岩比佐子が魅せられた
明治の愛しき雑書たち―日露戦争・独歩・弦斎>
6月26日(土) 10:00〜18:00まで
東京古書会館2F情報コーナー開催中
http://www.kosho.ne.jp/news/news_100525.html
*このイベントは終了いたしました。ご来場ありがとうございました
ブログ「古書の森日記」
http://blog.livedoor.jp/hisako9618/
工作舎の『古書の森 逍遙』のページ
http://www.kousakusha.co.jp/BOOK/ISBN978-4-87502-430-9.html
工作舎の『古書の森 逍遙』関連イベント等のページ
http://www.kousakusha.co.jp/DTL/kuroiwa.html |