━━━━━━━━━━━【自著を語る(41)】━━━━━━━━━━
『活字と自活』(本の雑誌社)
荻原魚雷
中央線の高円寺に移り住んで二十年。月末の家賃や食費の心配を
しながら、古本屋と中古レコード屋をまわる。大学を中退して、フ
リーライターになって、渡りに船、綱渡りの日々も続けているうち
に、そうした生活も日常になる。まあ、さえない日常なわけだが。
そうした不安定な暮らしにたいする心がまえや自活の術を知りた
くて本を読んだ。いっぽう、どんな世の中になっても、生きのびて
いけるような処世術や思想のようなものも身につけたいともおもう
ようになった。
『活字と自活』は、読書と生活を両立していく上での試行錯誤を
つづったコラムとエッセイを集めた本といえるかもしれない。食う
に困ってあれこれ試行錯誤しながら身につけた技術がおもいのほか
役に立つこともある。本やCDの売り方やなるべくお金をつかわな
い遊び方などがそうだ。
表題作「活字の自活」は「十年前」というタイトルでブログに数
回にわたって連載した文章が元になっている。
〈古本屋通いをするために、就職しなかったといっても過言ではない。
しかし文章を書く仕事をしている人間が、本を読んでいるのは、
当り前の話である〉(「活字と自活」より)
表紙は『コーヒーもう一杯』などの漫画で知られる山川直人さん。
山川さんの作品には、古本屋がよく登場する。
デザイナーの中嶋大介さんには、昔の雑誌風の本に仕上げてもらった。
本文レイアウトも三段、二段、一段になっていて、写真(十年前の
高円寺風景)やカットもはいっている。
尾崎一雄、中村光夫、鮎川信夫、トキワ荘、アメリカの
コラムニスト……。
紹介している本のテーマはバラバラだけど、生活を立て直したり、
気持を荒ませないためのヒントになるようなことをすこしは書けたと
おもう。
どこからでも読めるような本になっているとおもうで、気が向いた
ところから頁をめくってもらえたら嬉しいです。
※朝日新聞(2010年7月25日朝刊の読書欄)に荻原魚雷氏の
インタビュー記事が、掲載されています。
ブログ 文壇高円寺
http://gyorai.blogspot.com/
本の雑誌社 『活字と自活』
http://www.webdoku.jp/kanko/2010/#003419
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