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☆INDEX☆
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  1. 『筑摩書房 それからの四十年』  永江 朗
  2. 12人の優しい「書店人」      山本明文
  3. 古本屋慕情            中村靖則

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━━━━━━━━━━━【自著を語る(54)】━━━━━━━━━━

『筑摩書房 それからの四十年』

    永江 朗

  『筑摩書房 それからの四十年』を書いていて、「この仕事、引き
受けるんじゃなかった」と後悔した瞬間があります。それは倒産の
いきさつについて調べていたとき。筑摩の倒産は私が大学2年生の
夏で、毎月『展望』を読んでいた者にとっては大ショックでした。
もしかしたら『展望』に論文が載るかもしれないといっていたサー
クルの先輩もいたのでなおさらです。

 筑摩は世間の軽薄化に負けた、と私は思っていた。当時は角川文
庫のメディアミックス戦略が話題で、悪玉=角川、善玉=筑摩とい
うイメージです。新聞なんかのトーンもそうだった。今回調べてい
ても、「良書の筑摩」ってフレーズがよく出てきましたから。
 でも事実は違うんですね。倒産の少し前の経営陣は総合出版社化
をもくろんだ。目指せ、講談社、っていうノリですよ。社員も増え
た、給料も上がった。医学ビデオをはじめ、いろんなことに手を出
した。でも失敗。

 失敗のツケを払うために筑摩がとった手段は紙型再版です。つま
り本のテキストはそのまま、見てくれとタイトルを変えて、まるで
別の本のように見せかけて売った。買い切り・高正味という条件も
フルに活用して。つまり創業以来コツコツつくってきた書店の信頼、
取次の信頼、そしてなにより読者の信頼を悪用してカネをつくろう
とした。

 まるで食品偽装と同じじゃないか、とこの本に書きましたが、私
の筑摩に対するイメージが変わってしまった。知らずにいたかった
と思いました。

 でも、いちど地に落ちたから、復興のあれこれを聞くのは楽しか
った。それまで社内の傍流だった人が、ヒットを次々と出すんです。
たとえば松田哲夫さんですね。

 最近の防災学の議論では、山火事は消さないほうがいいという意
見があるんだそうですね。山火事になることで、新しい木が育つ、
山の新陳代謝が進むのだそうです。木の中には、山火事のような高
温になって初めて実を落とすものもあるのだとか。ちょっと筑摩書
房の再生と似てるじゃん、と思いました。


『筑摩書房 それからの四十年』筑摩書房刊
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480015174/


 

 

━━━━━━━━━━━【自著を語る(55)】━━━━━━━━━━

12人の優しい「書店人」   

                   山本明文

 書店業界で有名なスーパー書店員を取り上げよう。そんな意図で
始めたインタビューでしたが、どんな人に聞いてもぶつかってしま
うのが書籍流通の問題でした。ひと言では「出版不況」ということ
になるのでしょうが問題はそう単純ではないし、よく言われるよう
な取次悪者論で済ませられるわけでもない。

 本が売れないので、出版社は補うように出版点数を増やす。書店
は多すぎる新刊書籍に振り回され、本来の「魅力のある本を人に薦
めたい」という働く動機を忘れてしまう。これまでも多くの人が指
摘してきたことですが、本書ではそんな悪循環の真っ只中でも、歯
を食いしばって本来の仕事をやり遂げようと必死に働く人たちが登
場します。スーパー書店員とは確かに優れた能力を持つ人であるわ
けですが、目の前の複雑怪奇な問題に真正面から向き合い、地道に
解決を図る非常に忍耐強い人たちでもあるわけです。

 その方法は実に個性的です。POPを1日1枚必ず書き続ける、つまり
1日に必ず1冊読破する義務を自分に課したのが三省堂書店の内田剛
さんでした。古本を集めに集め、ついに50万冊に及んだというのが
谷口雅男さん、凄まじい人生です。仕事に向き合う姿を追いかけて
いるうちにインタビューは自然にその人の人生に踏み込んだ内容に
なりました。

 という経過で出来上がった本書なのですが、すでに読んでいただ
いた方のブログやツイッターを見ると、書店員養成のノウハウとし
て読んでいただける方がいれば、過酷な現場に驚く人、また、登場
人物の「名言集」を作ってくださった方もいます。みなさん本当に
ありがとうございます。

 原稿を書くのに1年かかりましたが、その間、時代は紙から電子
へと急激に動き、図らずも書店員がクローズアップされるようにな
りました。私は電子の時代だからこそ、玉石混交の情報の中で本当
に価値のあるものを見つけ、それを求める人のもとへ届ける。そん
な仕事がいっそう注目されると信じています。言うまでもなくその
能力を持つのが書店員です。

 みなさま、ぜひ、感想をお待ちしています。

『12人の優しい「書店人」』商業界刊
http://www.shogyokai.co.jp/shopping/view.php?type=shoseki&id=30000854



 

━━━━━━━━━━━【自著を語る(56)】━━━━━━━━━━

古本屋慕情

                     中村靖則

 作品は、作者の手を離れると、一人歩きするものだし、作者がど
うこう言っても作品そのものは、読んだ読者が判断するものだと思
います。それを前提に語らせていただきます。

 私が小説を書きたいと触発された作品がある。小山清の『朴歯の
下駄』と小沼丹の『村のエトランジェ』である。派手さはないが、
いぶし銀のような小説で、この小説を読み、いつかはこういう作品
をと思うのであるが、今まだ書けないでいる。

 さて私の古本屋慕情だが、全11編の収録作品は、同人誌『青梅文
学』に掲載されたものの内、古本屋をモデルにした作品を集めたも
のである。

「書痴」「ささやかな開店」「幻の蔵書」は、古本屋開業当時の四
苦八苦した顛末を書いた。「高円寺古本酒場」「安田のこと」は若
い古本屋の恋話、「天使」「金曜日」「螢」「吉祥寺南町」は、初
老の古本屋の恋話である。「キネマ通り界隈」は、青梅の織物景気
でにぎわっていた、青梅の花街が舞台で、小学校に転校してきた芸
者の娘との交流の日々を、織物業の衰退を絡めて振り返る淡い恋物
語で、「鳳仙花」も幼少期の青梅が舞台である。

 私は、毎年生きている証しとして書いてきたが、なかなか満足し
た作品が書けないでいる。先日、鎌倉に行った時にふと入った中華
料理店に、胡桃沢耕史の色紙が油にまみれて壁に貼られてあった。
そこに、「小説はインクの中に血と涙を混ぜて書く」としたためて
あった。私は、涙を混ぜた事はあるが、血は混ぜてない。これから、
そういう小説を書いてみたいと思っている。


『古本屋慕情』平安工房刊
    http://www.heian-koubou.biz/

 


 

━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━━

 編集長登場 第三回
  出版梓会 『出版ダイジェスト』(月3回発行)
     編集長 黒田拓也(東京大学出版会 営業局長)
      http://www.digest-pub.net/

 上林曉傑作小説集『星を撒いた街』 5月25日刊行
   撰者・解説 古書店・善行堂 山本善行
     夏葉社刊 http://natsuhasha.com/ 

 『編集者の食と酒と』 重金敦之著
  (左右社刊 定価:1,890円 好評発売中)
    http://sayusha.com/sayusha/903500621.html



 

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

 5月〜6月の即売展情報
http://www.kosho.or.jp/servlet/sokubai.ksB001

携帯電話からも見られるようになりました。。
http://www.kosho.or.jp/public/spotsale/mobileList.do

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日本の古本屋メールマガジンその103 2011.5.25

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     東京都千代田区神田小川町3−22 東京古書会館
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【発行者】
     広報部:西村康樹
編集長:藤原栄志郎

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