━━━━━━━━━━━【自著を語る(57)】━━━━━━━━━━
『編集者の食と酒と』(左右社)
重金敦之
編集者の仕事ほど、理解されない職業もないだろう。よく「縁の下
の力持ち」というけれども、その割には自己顕示欲が強い人もいて、
縁の下でじっと逼塞しているわけではない。もちろん個人差はある
が、本音は外へ出て名乗りを上げたいと思っている編集者も結構多
いのだ。
版元は帯の惹句(じゃっく)に、私が立てた候補の中から、
「どうしても編集者になりたくなる本」
を選んでくれた。編集者志望の学生にターゲットを絞ったらしい。
早速、元同僚だった後輩や元編集者から、次のような反響があった。
<帯の惹句には思わずニヤリとしました。この業界は、本当は楽し
く面白くワクワクする素晴らしい世界であるのに、今やグチや文句
ばかり聞こえてくるのは、残念なことです。>(元大手出版社書籍
編集者)
<編集者って、なんて魅惑的な言葉でしょう。くるくると時計が戻
るなら、やはりあのころの編集者に戻りたい。心底楽しい仕事でし
た。>(元料理関係ムック編集長)
<編集者の「良き時代」の尻尾にかろうじて間に合ったと思ってい
る私としては、うなずく点が多々あり改めて勉強になりました。>
(元地域情報誌編集長)
なるほど、もはや時は流れて、「編集者の時代」ではなくなった
のかもしれない。
期待通りに、編集者の入門書として評価してくれた人もいる。
中小出版社の元社長だ。
<この本は編集者を目指す人、新人にとってはまたとない教科書で
す。しかし今の世の中にわれわれと同じような気持ちで編集者を目
指す若者が数多くいるのかどうか。>
まったくおっしゃる通りだ。本書でも触れたが、信じられないこと
に、「本を読まない編集者」が増えてきているらしい。小学校のク
ラスメートの女性からは、こんな感想をいただいた。
<私は、編集者になれそうにもありませんし、なりたくもありませ
ん。偉い作家先生の心を読んで、算盤(ソロバン)をはじくのは、
難行苦行ということがよくわかりました。>
最後に、ある食品メーカーの元取締役の意見を紹介したい。
<編集者は本質的にプロデューサーですから、作品が生まれるまで
の全体を鳥瞰的に見通せなくてはできない商売でしょう。茶懐石の
亭主に近いかもしれません。>
そんなに大層な仕事ではないとは思うけれども、このような反響を
みると私と版元が企図したところは成功したのではないかと自負し
ている。姉妹書というべき同じ版元の『作家の食と酒と』(10年12
月刊)とも併せ読んで、「編集者志望」の若者がいささかでも刺激
を受けていただければ、こんなうれしいことはない。
やはり私も、冒頭に挙げた自己顕示欲の強い編集者の一人だったの
かもしれない。
『編集者の食と酒と』 重金敦之著(文芸ジャーナリスト)
(左右社刊 定価:1,890円 好評発売中)
http://sayusha.com/sayusha/903500621.html
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