理事長がゆく

「古本屋らしい古本屋」になろう 株式会社雄松堂書店 代表取締役会長 新田満夫氏

○古書業界への提言
新田
古書業界に身を置く若者達、特に家業を継いだ若者達にとってこの業界がどの様な存在なのかが重要だと思います。他で就職のあてもなく、家業を継いだ方が楽そうだ、という安易な気持ちなのか、継ぐメリットや面白さを見いだし、且つ自分の夢を果たせるにたる世界だ、自分ならこういうやり方をする、といった意欲があるのか。そして、志を高くもった次世代の若者たちの期待に応えられる組合であるのか、そこは重要だと思います。
 
「古本」と「古書」と
新田
 自分自身も疑問に思っていたのですが、そもそも「古本」と「古書」の違いとはなんでしょうか。若いころは先輩方に「古書組合と言っているのに、なぜ「古本」という言葉を使うのか、「古書まつり」と言わずに、なぜ「古本まつり」としたのか」と、質問したこともありました。皆さんにも同じ質問をしたいですね。言葉による人のイメージや受取り方は様々です。「古本」と「古書」と、何がどう違うのかわかりませんが、ならば堂々と「日本古本組合連合会」にすればよいと思います。「俺達は古本屋だ」というステータスを上げればいいのです。みなさんのおっしゃる「古本」は流通過程にのってはじめてそう呼ばれるのであって、個人のお宅にずっと置いてあるものを「古本」とは呼ばないでしょう。だから、一度皆さん自身が「古本」ってなんなのか?ということを議論したほうが良いと思いますよ。「古本」というと安いもの、「稀覯本」というと高いもの、「古書」というとちょうどその中間あたりのイメージでしょうか。いずれにせよ、デジタル化とかそういう話の前に、古本屋とは、自分達の役割とは何か、を考えてみてはいかがでしょうか。都合にあわせて器用に使いこなすのではなく、「俺たちは古本屋だ」、「古本屋らしい古本屋になろう」と、堂々と言い、そのうえで「古本こそ日本文化の継承だ」と、討議すればいいのです。
***
新田
私たちは二〇一一年十一月、日本と世界の古書を扱う「ワールド・アンティーク・ブックプラザ」をオープンさせました。世界中の古書を扱う書店は日本で初めての試みだと思います。従来の古書ファンの他、古書店に入ったことが無いような一般の人々にもっと古書の良さを知ってもらいたいと考え、あえて丸善日本橋店という古書のイメージがない場所を選びました。また、オープンに際し、稀覯本を意味する新しい日本語として、「アンティーク・ブック」という言葉をつくり、広く認知していただけるように岩波書店の広辞苑へ掲載依頼を提出しました。本来は「アンティクワリアン・ブックantiquarian book」ですが、「アンティクワリアン」では響きが難しすぎます。いわゆる一般的な「古本」との違いを明確にし、「稀覯本」より敷居を低く、それでいて「人類にとっての知的文化遺産」である、という意味をこの言葉にこめました。
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