ふらり、お店探訪

聞き手 矢下晃人 (アルカディア書房)

聞き手 宮部隼人 (古書 Dejavu)

宮部
長年学術書を専門に扱われてきた関根さんの立場から見て、最近取り沙汰されている電子書籍をどのように思っていますか。
関根
正直よくわからないね。紙の本が無くなることはないだろうけど、コンパクトだし何でも気軽に読めるのは確かに便利だよね。若い人は抵抗なく受け入れるだろうけど、ある程度の年代からはやっぱり紙が良いんじゃないかな。一昔前にマイクロフィルムがだいぶ流行ったけど、今は大学図書館に行ってもリーダーがビニールかぶってるんだよ。デジタルになると、どうしても長時間の閲覧には向かないわけで、そういった部分がどれだけ解決されるかだろうね。
宮部
これから資料物を扱いたいという方達にアドバイスを頂けますでしょうか。
関根
やめたほうが良いんじゃない?(笑)。学術書はこれから廃れていく、少なくともバックナンバーの世界ではなくなるでしょ。電子化が一番進んでいる分野だし、インターネット売買が盛んなこの時代に、常にストックを持っていなければ成り立たない商売は難しいよ。若い人達が業界に入ってくるのは良いことだけど、専門性の高い分野を扱えるようになるまでには十年、二十年は当たり前にかかる。まあ、そういうマニアックなジャンルであれば生き残ることはできるかもしれない。あるいはとにかく回転を速くすることだろうね。

 僕は倉庫を四つ使っているけど、倉庫代のために商売しているようなものだね。会計士に言わせれば在庫は全部つぶしちゃった方が良いんだろうけど、でも他に誰も持っていない本が沢山ある。つぶすのは簡単けど、その本がこの世界からなくなってしまうことは確かだからね……。たださっきも言ったように品物を抱え込んで商売するっていうこれまでのスタイルじゃ今後はやっていかれないよ。
矢下
長時間、貴重なお話をお聞かせ頂きありがとうございました。最後に現在関根さんはどの様なご商売をされているかお聞かせ頂けますでしょうか。
関根
いたって普通の古本屋だよ(笑)。一発屋っていうわけでもないけど、本を集めるのがとにかく好きだね。例えば岩波文庫なんかダブり無しで五千冊ぐらい持ってるけど、昭和二年からの刊行開始から今までに五千五百点ぐらいでしょ。それに近い数字になったら納めようかなって。そんな風にとことん揃えてコレクションにしてから納めるっていう、誰もやらないようなスタイルが性に合うんだな。別に売りたくないわけじゃないんだけど、「せっかくここまで育てたんだから、できるだけ完璧なものにしよう」って思っちゃうんだよ。どんな分野でもね。
矢下
その様なコレクションをいくつかお持ちなのですね。
関根
中途半端なものはほとんど出したことないと思うよ。
矢下
最後にこれからの展望をお聞かせください。
関根
真っ暗じゃないの?(笑)。スキーと年に何回かの旅行ができればそれで良いと思ってるんだからさ。  でも、さっき例に出した岩波文庫なんかはみんなどんどん売っちゃうじゃない。品物の性質としてはもちろんそういうものだし、新書なんかでもとにかく点数が多いから市場にまとめて出してしまう。それが普通の商売だよね。だけどやっぱり人がやらないようなことをやりたいし、今はかろうじて売らずに置いておけるから、誰も揃えたことのないようなものを集めて、一つの文化遺産とは言わないまでもコレクションとして完成させることが、何よりの楽しみじゃないかな。
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