二年連続売上増
新しいもの好き
育った時代の本を中心に
ひとつの古書展を通じて
大阪モダン古書展より
 

二年連続売上増

                 熊本・舒文堂河島書店 河島 一夫

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 店の決算月は三月である。毎年のことではあるが、その時棚卸をする。大変な作業である。二か月以内に申告となるので、五月末までに申告しなければならない。税理士さんがまとめて持って来られる時は、学校での成績表を見る思いである。昨年度の結果は、五年前の売上にもどった。

 店を新築した時が十三年前になる。同時に、店を有限会社にして毎月の経理を税理士事務所に委託している。店を新築した時は、まだ景気は左程悪くなかった時期だった。一年目も売上はよかったが、二年目はもっとよかった。大台の売上を記録した。この先、十年後はもっとよくなるだろうとその時思った。しかし、思いに反して三年目は売上が落ちた。初年度よりも悪かった。それから、毎年微妙に落ちていくのである。その後も八年間で初年度の七割の売上まで落ちた。一昨年の売上が、久しぶりにその前の年度より良かった。その時やっと右肩下がりの売上のグラフがちょんと上向いた。税理士さんに経理をお願いした時から、売上や在庫等をグラフにして持って来られるようになったのだ。何年ぶりかに前年度の売上よりよかったのかとグラフを見て思った。この春のグラフは、一昨年度より、またぐっと右肩上がりの線になっていた。二年連続売上増である。やっと底から脱却したかと、少々安堵した。

 細かな売上の内容は差し控えるが、売上増の要因は、ウブな史料性が高い仕入れが数回あったためであろう。それも一点が数十万円から百万円を超えるような仕入れにめぐりあえたことであろう。やはり良くて高額の品物を扱わないと売上は伸びないと思ったし、良い品物は高くても売れていくものだと思った。もうひとつある。店売りが回復してきている。一日の最低売上の金額も大きくアップしている。入店者も増えてきている。若い女性が増えたのは場所がらかもしれないが、嬉しいことである。

 私は、多くの方々から教えを受けながら商売をしてきているのだが、その中でも反町茂雄氏に出会えたのが、一番の商売の糧になっている。私は熊本で商いをしているのだから、細かな本の知識などを受けたわけではない。この商売をするにあたっての心構えのようなものを反町氏に会う度に、叱咤されながら教えを受けた。「いいですか、同じ本を扱うのに安い本を扱うも高い本を扱うも同じ時間を要します。それだったら高い本を扱う方が、商売として良いに決まっているではないですか。できるだけ良い本を扱うように努めなさい。」そのようなことを、会う度に言われたことが体に沁み込んでいる。良い本とは、この商いの本流となるようなものをいうのだと思っている。歴史的資料性の高いのもその内のひとつだ。

 それともうひとつ、売上が伸びたのは、東京や関西等の同業者の方々との交流があるのも大事なことだ。地方にいれば特に、多くの業界の方々と親しくなることは業績を伸ばすひとつに他ならない。最後に、長男康之が二年前から店を手伝い始めたのも売上アップに繋がっている。特に、目録作成や学校関係の接客は雄松堂書店仕込みで頼もしい。  今年度も、今までの良かった面と悪かった面をよく考えて、二年目の売上まで回復するよう頑張っていきたい。


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