私の参加していた「アンダーグラウンド・ブックカフェ 地下室の古書展」(以下、地下展)は、本年六月の第十一回をもって、ひとまず終了した。ポスターや目録に「ファイナル」と記載したためか、多くのお客様に惜しんでいただいたのは嬉しい限りであった。
そもそも地下展は、新・東京古書会館に作られた新しい設備をフルに活用すべく始まった古書展であった。とは言え、最初は我々も何をやっていいのか分からず、知人の協力を得て、どうにかこうにか映画上映と展示を併催した。イベントも古書展も初めてにしては中々良い内容であったが、いかんせん平日の初開催。来場者数の面では決して満足のいくものでなかった。
ここで一念発起した。もっと色々やらねばならないと。ただでさえ新規参入、平日開催のハンデがあるのだから、普通ではだめだ。
地下展の諸先輩方は実に寛容で、まずダメとは言わない。「新しい設備を活用する」をまさに額面通り受け止め、トークショー、落語、映画上映、ライブ、ワークショップ、展示、フェア。思いつき、実現できるイベントはドンドンやってみた。
日程も組合に要望して日曜初日とした。ご存知のように日曜の神保町はいささか寂しい。最初は不安だったが、驚くほど人が来た。
新しい客層を開拓せねばならないと、チラシを新刊書店、美術館、カフェ、雑貨店などに撒いた。撒いた……と簡単に書いたが、当初は苦労ばかりだった。何しろお膝元の本の街・神保町ですら、「古書会館」「古書展」という言葉が通じない。本当に愕然とした。
イベントのおかげで来場者は増えたが、かならずしもすべての方が本を購入する「お客様」にはならない。イベントに参加し、展示を見るだけで帰られる方もいる。じゃあ何のためにやるのかと言えば、話題性・広報の面が大きい。何も買わない来場者の方も、イベントや展示の様子を自身のブログで報告してくれる。これが次に繋がる立派な宣伝になっている。そして主催者である私達が「楽しい」。これが大事。
一方で「買う」お客様が増えていったのもよくわかった。注文品の受け取りとは別に、ある程度の高額品がよく動くようになった。理由はわからないが、ゆっくり見られるような落ち着いた会場の雰囲気のせいだろうか。また客層の幅が目に見えて広がっていった。これほど女性客の多い古書展は無かったと思う。
これらの新しい動きの多くは、お客様や異業種との交流から生まれたものだ。投げかけてみれば、必ず反応があった。昨今、業種を超えた「本」のイベントが各地で盛んである。悪いニュースの方が多い「本」の業界だが、明るい話題はまだ作れるはずだ。 |