小沼
私たちは「日本の古本屋」という古書の販売サイトを運営しています。全古書連の組合員2200店のうち、約900店が参加し、データベースにはおよそ620万点の登録がありますが、私たちが期待する受注率には中々いたりません。その大きな要因の一つはAmazonのように登録データが画一化されていない点にあると考えています。データは各古書店がそれぞれ自分の手で入力しているものですし、ISBNもありません。以前私たちも「日本の古本屋」を標準化したいと試みたのですが、実際にはまだ達成出来ていません。
長尾
私たちのOPACはオープンなものでどなたでも利用できるようになっていますが、検索するだけではなく、書誌データを無料で提供しています。もし「日本の古本屋」に取り込むことが可能なのであれば、基本的な部分についてはデータを均一化できるのではないですか。
小沼
それが実現できれば、とてもありがたいお話です。データベースも整形され、それから先は各自が持っている本のコンディションや販売条件を付け加えるだけですから、利用者だけではなく私たちにとっても大変便利になります。
長尾
今は新刊書でも書店へ行かずにAmazonで買うという人が増えてきました。古書にしても「日本の古本屋」のデータベースが使いやすくなればAmazonと同じような形で利用されるのではないでしょうか。
小沼
是非そういった方向で進むことができればと考えています。いや、進めなければ私たちは生き残ることができませんね。しかし長尾先生のお話を伺っていると、「デジタル化の流れは避けようがないのだ」という実感がますます強くなります。私たち古本屋の共通意識として周知させなければいけないと改めて感じます。
長尾
大きな流れ自体は変わらないでしょうね。しかしどれだけデジタル化が進んでも、紙の本を扱う古本屋さんの姿は生き続けると思いますよ。
小沼
デジタル化については書籍よりも音楽媒体の方がずっと先に進んでいます。書籍も同じような未来を想像すれば良いのでしょうか。
長尾
そのように思います。ただ音楽媒体と違うのは、書籍の世界には図書館があるということです。そして国会図書館は今後JASRACのような機能を持つ可能性があります。例えば大手印刷会社は独自の流通プラットフォームを作ろうとしていますが、しかしそれはあくまでその会社が抑えている書籍に限られます。他の会社の試みについても同様です。それに比べて国会図書館は過去の本も、そしてこれから出る本も全て持つことになります。日本の文化全体として考えるならば、そういった場所がJASRACのような役割を果たすべきでしょう。もちろん現在は色々な試みがなされており、多様な価値観が錯綜しています。しかし二、三年である程度のヴィジョンが必ず見えるはずです。
小沼
私たち古本屋にとっても書籍のデジタル化に関しては国会図書館の主導で進めて頂き、長尾先生が構想されているビジネスプランの現実化が望ましいと考えています。そして是非ともその新しい流通サイクルの中に古本屋の存在を忘れずに加えて頂きたいのです。私たちを取り巻く環境は大変厳しいですが、業界を挙げて知恵を絞り、生き抜いていくための方法を模索している最中です。様々な部分で連携できるのではないかと思いますので、どうか今後ともご教授を賜りますようお願い致します。本日は大変お忙しい中、お時間を割いて頂き、誠にありがとうございました。
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