古書店の役目
京の古書即売会
地域を越え、古本屋のワクを越えて新しい企画を!
続「がらんどう」のこと
仕入れを調整して余暇を取る
三酔人古本屋問答
古書界を長く見つめて想う悔いのない自伝
少しの仕掛と趣向
 

古書店の役目

                 神保町・秦川堂書店 永森 譲

http://shinsendo.jimbou.net

 昭和三十六年大学卒業後、他業種を五年間経験して家業の古書店に入りました。商売の流儀については父に教わり、結果二十七年、仕事を共にし、そのお蔭で現在があります。また古書店を経営していくには、古書組合の組織、販路の多様性、お客様とのつながり等が蔭の力となって存在します。その一端をお話して、古書店の有様が少しでも読者の皆様にご理解いただければと“良いこと尽くめ”の古書業界を紹介いたします。

古書店の組合
東京都古書籍商業協同組合に加入しますと、組合直轄の古書交換会(古書市 場)の利用は勿論、専門書市会への入会、古書の知識の吸収、古書業界の内部情報の入手、組合インターネットサイト「日本の古本屋」への加入ができ、対外信用も確かなものとなります。組合の主たる業務としての交換会は修業を兼ねた若手と市会幹事により運営され、毎日集荷されてくる都内古書店の古書籍が手際良くさばかれます。互助精神に基づいた組合本部の組織は、我々古書業者にとっては必要不可欠なものとなっています。

さまざまな販路と自由な価格
商売の基本は店舗販売ですが、通信販売、即売会、古本まつり、ネット販売と販路は多様にあり、どの販売方法も選べますし、可能ならば、全ての方法でも良いわけです。基本的な本の相場は、組合交換会の出来値から発生してきます。その販売価格は店主の頭ひとつで決めますから、こんなに良い商売はないと言えましょう。昔は相場情報の共有化など無く、古書店主それぞれが独自判断で価格設定をしていたので、古書店ごとの違った価格があり、お客様は不思議に感じていたようですが、それが、掘り出しものの楽しみに繋がっていましたから、お店巡りが面白かったとなります。並んだ古書店のなかで価格差のあることはとても魅力的だと思いますが如何でしょう。

古書を通じて人の交わり
過去四十年、どれだけのお客様からお世話になったか計りしれません。その時々に本と共に思い浮かぶお客様、そして本と共に深まるお付き合いは、古書店側か ら見て何よりの醍醐味です。お客様から学問的知識をいただき、書物に接していると、興味の尽きることはありません。何年修業しても奥は深く、日々勉強の毎日ですが、新しい商品との出会いは、飽きる暇も無く続きます。古書店の将来に関しては、書物のある限り古本屋の役目は終わらないと、肝に銘じて仕事をしていきます。この五月、二十五年ぶりに店舗改装をしました。眠っていた多量の在庫本類を目の前にし、これからどんな手段でこれらをデビューさせるか大いに楽 しみに思っている近頃です。よいこと尽くめの話で古書業界を振り返りましたが、そのような良いことばかりでないのが世の慣わしです。またの機会があったら 今度は困った事尽くしでも……。


日本古書通信社: http://www.kosho.co.jp/kotsu/
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