総理: 生活と文化を結ぶのは本ですよ。バブルがはじけてシャボン玉。 ただ、古本屋さんは特色があるのでまだまだ面白いのではないでしょうか。
古本屋: 何を呑気なことを仰言ますか。先日も親しい同業が仕方なく 店を閉めました。「ブックオフ」 の進出、インター・ネット、これは 従来の「街の古本屋」には痛打と警鐘です。
医者: 私も時々立寄りますが、前の賑わいがありません。閑古鳥が 鳴いている感じです。
古本屋: わたしも泣いています、本の上で♪
総理: 泣いても聞いてもらえませんね、「本離れ」では。
医者: その影響は大きいですね。まあ、このところの教育政策の結果じゃありませんか?
総理: ムムム。
医者: I・Tは、子どもの自我形成や発達のバランスに危うさを生じさせています。それに時流だからと安易に加担した総理がいましたね。
総理: あ痛(I・T)。ムムム。……ネットと市場経済のあり方、今どこでも大問題なんですよ。その点、古本はリサイクルですし、なんといっても文化です。
医者: 「文化饅頭」、「文化食堂」、「文化革命」……
総理: 伝統のある文化ですよ。
古本屋: 店を閉じた親しい同業は悲惨で、藁をもつかむ気持でネットに潜って、新天地を求めています。そこでは一応の「成功」を得ている人もいます。
医者: 結局、そこでもお金ですよ……リアルの世界へ戻った時もまたお金。
古本屋: ブックオフは、リアルの世界で金脈を当てた。古本屋の狭い・暗いなどを批判した。本は生もの、腐るから在庫は持たない、と。
医者: それじゃあ本は「文化饅頭」ですね。
古本屋: そして大資本らしく「価格破壊」でした。
総理: 古本の世界も市場経済が猛威をふるっているわけですね。
医者: 特に古本の世界では、所有が内面に結びつかない所有へと市場化してきた。それにしても売買ルールのある市場経済……無愛想は暗いですね。
古本屋: ん。……そういえば先日、お医者さんが診察の前に「いらっしゃいませ」って挨拶するんですよ、ビックリしました。
医者: 領収書を発行したりで、医者も商売ですからね。
総理: 「本離れ」と言われながら、一方で今の若い人も、物語を求めてるって聞いています。
医者: さすが。では、次の改革は「読書の復権」、これぞ現代の「米百俵」です、総理。
総理: そうだ、教育で読書の義務化に取り組んでみよう。古本屋を日本の文化遺産にしよう。
医者: 「米百俵」どころじゃない……この総理も性急すぎる。これでは読書離れの加速です。
古本屋: 総理、教育や文化に口を出さないでもらえないでしょうか。……お客が戻ってくる僅かな可能性よりやっぱり、お迎えが先にやって来そうだ。
一同: されど、吾等が屍をのり越えて、文字の世界は、人の世のあるかぎり……
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