聞き手 椛澤賢司(九蓬書店)
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- 今は昔と比べて古書業界全体がとても厳しくなっていますよね。そういう中でも新たに自分の力で開業している人たちがいますが、そういった方たちに何かアドバイスをいただけますか。
- 下
- 僕たちの頃とはあまりに時代が違いますから、迂闊なことは言えません。でもこんな時期に古本屋を始める人たちは本当に勇気があると思います。
僕みたいな性格だから言えることかもしれないけれど、あまり毎日の売上げを気にして商売をしなくても良いんじゃないかな。儲けることを考えなくて良いというか。大雲堂さんの頃も「安い札でも良いから満遍なく入れろ」と教えてもらったんだけど、結局は薄利多売というのが生きていく道なのかもしれない。
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- 最近はインターネットから始めた人でも、店を持ちたいと思う人が増えているんですよ。
- 下
- すごく素晴らしいことですね。家賃を払っていくのは大変なことだけど、できるならどんどんやって欲しい。店というのはやっぱり良いものだし、街に古本屋があるということは、それだけで意味のあることですからね。僕も田園調布で店を始めたばかりの頃は、馬鹿にされたわけではないけれどもやっぱり敬遠されているような感じがあった。それでも長い間続けていくといつかその街に無くてはならない場所になっていきます。そういう店が増えて欲しいですね。
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- 下さんのお店はお客さんからも愛されていて、まさに今仰ったとおりの「街に無くてはならない場所」ですよね。
今日は長時間本当にありがとうございます。最後に下さんのこれからについて聞かせてください。
- 下
- 毎日の商売はとても楽しいです。さっきもちょっと言ったけど、売上げを気にしなければ本当に古本屋は楽しい、それに尽きるんじゃないかな。だからこれからもずっと古本屋を続けていく、それが僕の生きる道だね。