文の京(ふみのみやこ)に、学術書とこだわりの古書屋。
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古書店の団体である東京都古書籍商業協同組合の文京支部に所属する古書店を総称して「文京の古本屋」と呼んでおります。私たちは文の京(ふみのみやこ)と呼ばれる東京都文京区で、和本古典籍から、学術書、作家書簡・原稿、浮世絵、古文書、文芸書、掛け軸、版画、洋書、アート、絶版漫画、特撮、サブカルチャーなどあらゆる各ジャンルの専門店として日々、古書のお取引を行っております。
東京都古書籍商業協同組合文京支部は大正9年、前身の東京古書籍商組合発足に伴い、旧本郷区、旧小石川区で営業を行っていた古書店が当初、第四区支部として登録され、第七支部への名称変更を経て、現在は文京支部という名称で、古書業者の協同組合として現在まで東京都文京区にて運営を続けております。(本部は神田神保町)組織変更は有りましたが、小売業の組合組織で大正時代から現在まで存続されている組合組織は全国的にも非常に珍しい存在です。
当支部は支部創立以前から現在に至るまで一般の古本を扱う古本屋としての業者は少なく、古典籍や学術書を中心に営業をしており、専門店の集合体として今日まで営業を続けてまいりました。(文京区の古書店は営業自体は明治20年頃から旧本郷区、旧小石川区を中心に営業を行っておりましたが、正式な組合組織が出来たのは大正9年になります。)
「文の京(ふみのみやこ)」と呼ばれる、文京区における学問の歴史は非常に古く水戸藩主、徳川光圀公(水戸黄門)の命により、小石川の水戸藩邸に置かれた彰考館では歴史書『大日本史』の編纂が行われ、彰考館が水戸に移された後も編纂事業は続けられ全397巻の完成には、明治39年まで250年の歳月を要しました。
そして水戸藩の提唱する「水戸学」は幕末期には全国の志士に多大な影響を与え、水戸藩は明治維新の魁となりました。
また、湯島の昌平坂学問所では多くの幕臣や他藩士の子弟等が学び、明治を迎えると昌平坂学問所の系譜は東京大学へと引継がれていきました
この様な文京区における長い学問の歴史も当支部が古典籍や学術書を中心に取り扱う事になった要因の一つとも言えるのではないでしょうか。
神田神保町に比べ当支部では店舗での販売よりも古書、専門書、古典籍を中心に目録(カタログ)による通信販売や事務所営業を主に行う業者が戦前より多く、明治22年7月には東海道線が開通し、今まで困難だった目録や商品の東西間の輸送が容易になった事から、翌明治23年初め頃から古書店による目録販売が本格的に始まりましたが、早くも23年1月頃には、かつて伝通院の僧を主な顧客としていた小石川伝通院前の雁金屋(江戸時代から営業を行っていた文京区小石川で最古の古書店)が目録による通信販売を開始しています。これは日本における最初の古書の通信販売と言われています。また、昭和16年には既に当支部員内で通信販売業者組合が結成されるなど当時から当支部の特異性が伺われます。
加賀藩上屋敷で有った前田邸は、明治4年に文部省用地となり、明治10年に我が国最初の大学として東京大学が設立されました。
現在本郷古書店街の有る本郷六丁目(旧森川町)辺りは江戸時代、徳川四天王と呼ばれた本多平八郎忠勝公を藩祖とする岡崎藩本多邸が有り、明治以降は森川町となり、東京大学(旧東京帝国大学)の近くである事から数多くの古書店が営業を行い本郷古書店街ができました。
大正生まれの文京支部員の古書店主の話によると、本多忠勝公は江戸時代の初めから、終戦まで本郷に有った映世神社に祭神として祭られ、戦前は毎年盛大な祭りが行われていたとの事です。明治以降も森川町は本多家の所有となり、住民は結婚の際には森川町の本多家に挨拶に伺う等のお付き合いが、戦後華族制度の廃止により本多家が森川町の土地を離れるまで続いたとの事です。
文京区は文の京(ふみのみやこ)とも呼ばれ、かつて森鴎外や夏目漱石、樋口一葉などの文人が多数居住しておりましたが、現在でも営業を行っている文京支部員の古書店へ森鴎外が訪れた話なども残っております。
また、推理小説の大家、江戸川乱歩にいたってはかつて文京区の本郷団子坂にて兄弟三人で古書店「三人書房」を大正8年から約一年間営業しておりました。
雑誌『日本古書通信』の大正4年生まれの八木福次郎社長の談話によると、「大きな風呂敷を持って神田(の古書の業者市。大正5年に落成した東京図書倶楽部と思われます。)に仕入に行ったこともある、君より、古本屋としてはずっと先輩だよ」と生前の乱歩から直接伺ったと述べられています。
この事から営業期間は短かったもの、乱歩が決して片手間ではなく、本格的に古書店を営業をしていた事が伺われます。やがてこの本郷団子坂の「三人書房」は乱歩自身の手により「D坂の殺人事件」として小説の舞台になりました。
前述の様な当支部の専門性や特異性から、神田神保町に比べ一般のお客様にはあまりご縁が無かった方もいらっしゃるかと思いますが、現在でも東大赤門前の本郷古書街を中心に40件以上の古書店が営業しております。古典籍、学術書を中心に営業を続けてまいりましたが、近年ではアート、サブカルチャーなどを扱う業者も増え、より支部の専門性の幅を広げております。
一つの区に現在でもこれだけの数の専門性を持った古書店が存在している地域は非常に稀ですので、今まであまり当文京支部の古書店とご縁の無かったお客様もこれを機会に売買共にお付合い頂けましたら幸いです。
参考資料
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